REGULAR

献身的な守備で勝ち取ったポジション。逃げ出さなかった男、柏レイソル・山田康太の逆襲が始まる

2023.08.23

太陽黄焔章 第3回

ようやく本領を発揮しつつある。J2のモンテディオ山形から、満を持して柏レイソルへとやってきた山田康太のことだ。もちろん最大の特徴が攻撃センスにあることは言うまでもないが、井原正巳監督もキャプテンの古賀太陽も評価するのは、その守備の献身性。走れて戦える本来の特性が周囲にも浸透してきたことで、攻守に効果的なプレーが随所に現れてきた。今回も柏フットボールジャーナルでおなじみの鈴木潤が、紆余曲折を経てきた今季の山田のここまでを、本人の言葉を交えてあぶり出す。

セレッソ大阪戦で披露した完璧なアシスト

 第23節のセレッソ大阪戦、前半7分にマテウス・サヴィオからパスを受けた山田康太は、前を向いてドリブルを開始すると、相手の守備陣を引きつけた後にフリーの戸嶋祥郎へパスを通して先制点をアシストした。

 「ゴールが欲しかったので最初はシュートを打とうと思ったんですけど、大外のサチくん(戸嶋)に付いていたディフェンスの足が止まっていたのが見えたので、途中からは打つ選択肢はなくて、どれだけ引きつけられるかに意識は向いていました」

 狭いエリアへ侵入したドリブル、瞬時の閃き、ラストパスの精度。山田の持ち味が存分に発揮されたプレーだった。

J1・第23節、柏レイソル対セレッソ大阪のハイライト動画

「自分がそこで逃げ出そうと思えば、いくらでもできたと思う」

 今季の柏は、キャンプから[4-3-3]の新システムにトライをしていた。モンテディオ山形から移籍加入の山田は、そのシステムでインサイドハーフのポジションを与えられ、マテウス・サヴィオとの連携で攻撃にアクセントを与えるなど、チームに新たな可能性をもたらしていた。

 だが開幕3試合を戦い、2分1敗と結果が出ないことを受けて、ネルシーニョ前監督は新システムに見切りをつけ、昨季までの[5-3-2]に戻した。攻撃の枚数を減らし、守備の選手を増やす関係上、山田がサブに回るケースが増えていった。5月17日の井原正巳監督の就任を機に一度はスタメンに返り咲いたが、当初与えられたサイドハーフでは本領発揮とはいかず、第15節の川崎フロンターレ戦以降は再びスタメンから外れた。……

残り:2,792文字/全文:3,697文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

鈴木 潤

2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。

RANKING