「いるだけで脅威」「2トップだけで仕留める力がある」FC町田ゼルビアが誇る2枚看板、デューク&エリキが織り成す絶大なる相乗効果
ゼルビア・チャレンジング・ストーリー 第2回
町田の名を全国へ、そして世界へ轟かせんとビジョンを掲げ邁進するFC町田ゼルビア。10年以上にわたりクラブを追い続け波瀾万丈の道のりを見届けてきた郡司聡が、その挑戦の記録を紡ぐ。
第2回で取り上げるのは、首位を堅持し前半戦を終えたチーム自慢の2トップ、ミッチェル・デュークとエリキだ。総得点(33)の45%をマークしている数字面だけ見ても貢献度の高さは明らかだが、取材を通して得た本人たちやチーム内、さらには対戦相手たちの“証言”を交えて、その存在の大きさをよりはっきりと描写する。
“名バディなき”エリキはどこか空回りしていた。
エリキの名バディと言えば、オーストラリア代表のミッチェル・デューク。しかし、前半戦ラストマッチの第21節栃木SC戦は、デュークが3日前に中国でアルゼンチン代表戦を戦ったばかりで「旅程が長かった」(デューク)ため、コンディション面を考慮されてベンチスタートに。2トップのパートーナーには藤尾翔太が起用されていた。
責任感が人一倍強いエリキは、大きな重荷を背負っていたのだろう。いつも以上にボールサイドに顔を出し、チャンスメイクに奔走。いつもならゴール前で怖さを発揮する彼がサイドに流れることも多く、相手にとって最も危険なエリアを自ら留守にしていたようにすら映った。
「ボールが入ってくることが少なかった」(エリキ)。チームメイトからのパス供給が少ないのであれば、自らの力で道を切り拓けばいい――その結果、エリキは自らに数多くのタスクを課した。
ところが、そんなエリキの奮闘とは裏腹に、チームは27分に先制点を被弾。結局、前半の彼は1本のシュートも撃てなかった。
0-1で迎えたハーフタイム。町田ベンチは満を持して、代表帰りのデュークと平河悠を後半のスタートからピッチに送り出した。こうして名バディを得たエリキは、前半とは見違える姿を披露する。
前半はやや後手に回っていた相手CB陣との空中戦は、デュークが入ったことで勝率がアップ。相手DFは空中戦で少しでも優位に立つために、どうしても町田の15番に神経を使わざるを得ない状況に追い込まれた。こうして後半はエリキに集中していたマークが前半よりも分散し、エリキ本人もボールを引き出す動きを最低限に自重。効果的なアタックを繰り出すチャンスを虎視眈々とうかがった。こうして“水を得た魚”のごとく、攻撃性が解放されたエリキは、1点を追いかける終盤の78分に大仕事を果たす。
平河による右からのクロスに反応したエリキは、根本凌の寄せにも屈せず体幹の強さを生かして前を向くと、チャン・ミンギュとのパス交換から狭いボックス内のスペースをかいくぐり、栃木ゴールをこじ開けた。試合後の本人は「そんなに難しいゴールではなかった」と涼しい顔で振り返りつつ、「デュークが入り、マークが分散したことでチャンスになった」と名バディに感謝した。
「2人が長い時間、ピッチにいることが最も重要かもしれない」
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Profile
郡司 聡
編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、エルゴラッソ編集部を経てフリーに。定点観測チームである浦和レッズとFC町田ゼルビアを中心に取材し、『エルゴラッソ』や『サッカーダイジェスト』などに寄稿。町田を中心としたWebマガジン『ゼルビアTimes』の編集長も務める。著書に『不屈のゼルビア』(スクワッド)。マイフェイバリットチームは1995年から96年途中までのベンゲル・グランパス。