「世界レベルの強度を身につけなければならない」U-20W杯落選の保田堅心が期す捲土重来
トリニータ流離譚 第1回
片野坂知宏監督の下でJ3からJ2、そしてJ1へと昇格し、そこで課題を突きつけられ、現在は下平隆宏監督とともにJ2で奮闘する――漂泊しながら試練を克服して成長していく大分トリニータのリアルな姿を、ひぐらしひなつが綴る。第1回は、U-20アジアカップで出場権獲得に貢献しながら、U-20日本代表のメンバーから漏れた保田堅心の今に迫る。
U-20W杯メンバーからの落選
2023年5月8日。発表されたU-20日本代表メンバーの中に、保田堅心の名前はなかった。
「自分にまだ力が足りてないということ。代表チームの首脳陣の判断を、きちんと受け止めたい」
選考から漏れたことを受け、11日に大分スポーツクラブグラウンドでの練習後、保田は落ち着いた表情で話した。
今季、大分U-18からトップチーム昇格を果たした、181cm68kgのスラリとした大型ボランチ。2005年3月5日生まれで18歳になったばかりだが、今年の誕生日を迎える前の2月には、大分アカデミーOBで1学年上のMF屋敷優成とともにU-20アジアカップ・ウズベキスタンを戦うメンバーの一員として招集され、U-20W杯出場権獲得に貢献していた。
アジアカップでは第1節・中国戦(〇2-1)に90+6分、山根陸と交代出場したのを皮切りに、第2節・キルギス戦(〇0-3)に先発し65分に安部大晴と交代。準決勝・イラク戦にも先発で出場すると北野颯太と交代する68分までプレーし、試合はPK戦で敗退となったものの、その伸びしろに期待される新人として注目された。
中盤の底でボールを受け、独力で前を向けるところが一番のストロングポイント。リーチが長いので相手のカウンターやパスに対しても脚を出して触り、即座に味方に出して攻撃に切り替えることができる。
だが、やはり松木玖生(FC東京)や佐野航大(ファジアーノ岡山)らの壁は厚く、大分からアルゼンチン行きの切符を手にしたのは、予選で右SBを務め積極果敢にゴールに迫るプレーで存在感を発揮した屋敷のみだった。
過密日程が2種登録の17歳の覚醒を促す
保田は福岡市出身で、中学時代はサガン鳥栖U-15で過ごした。中3の年にはクラブユース選手権優勝も果たしたが、U-18への昇格は見送られ、高校進学とともに大分U-18に加入したという経緯がある。大分では早くから高い評価を得て、高2だった2021年8月に2種登録されると天皇杯4回戦・ザスパクサツ群馬戦に105+1分から出場しトップチームデビュー。翌年もプレシーズンから2種登録されて時間の許す限りトップチームに帯同し、J2第20節・FC町田ゼルビア戦に86分から出場してリーグ戦初出場も果たした。……
Profile
ひぐらしひなつ
大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。最新刊は2023年3月『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』。 note:https://note.com/windegg