噛み合わないDFラインのパズル。アーセナルが4月に急失速した理由を探る
せこの「アーセナル・レビュー」第1回
ミケル・アルテタ監督の下で一歩ずつ着実に再建を進めているアーセナル。その復活の軌跡をいち“グーナー”(アーセナルサポーターの愛称)でありながら、様々な試合を鋭い視点でわかりやすく振り返っているマッチレビュアーのせこ氏がたどる。第1回では、4月に急失速してプレミアリーグ首位の座を明け渡した要因をピッチ上から探っていく。
なんと、いちアーセナルファンに過ぎない私が今月からfootballistaでアーセナルの連載を持つことになった。毎節勝手に試合を見て、勝手にマッチレビューを書いているだけの自分が定期的に思うことをつらつらと書き連ねる機会をいただけることは非常に感謝である。
また、追い続けているチームがメディアに取り上げていただけるようになったのも喜ばしいとともに、時代の変化を感じる。ベンゲル体制終焉以降はピッチ内、とりわけ試合内容についてあまり顔向けされなかったアーセナルがいろんな媒体に取り上げられるようになった変化はfootballista以外でも強く感じるところ。今季の躍進なしにこの連載開始はありえなかったはずだ。チームに対してもあらためて感謝を述べたい。
おめでたい冒頭の挨拶とは裏腹にアーセナルの4月におけるリーグ戦成績は芳しくなかった。リバプール戦(2-2)、ウェストハム戦(2-2)、サウサンプトン戦(3-3)、そしてマンチェスター・シティ戦の4試合で勝ち点を落としている。
とりわけ、プレミアリーグ優勝を争うシティ相手の完敗はインパクトが大きいものだった。4-1というスコアもさることながら、内容でも圧倒され「盟主は自分たちだ」という勝ち名乗りをシティに許してしまった試合と位置づけられるだろう。現状、あの仕上がりのチームと対峙した時にできることがないというのが、アーセナルの現在地である。
しかしながら序盤戦で勝ち点の貯金を蓄えていたアーセナルは、3月末時点でも6連勝中。1試合消化試合の少ない2位シティに勝ち点8差をつけていた好調を維持できていれば、直接対決で敗れても首位をキープできていたはずだったが、その直前3試合で勝ち点6を落とした急ブレーキが響いて優勝争いの主導権をライバルに明け渡してしまった。
攻守に響くサリバ離脱とその代役問題
3試合の中でもサウサンプトン戦の内容は、少し毛色が違うものだった。バックラインでミスが頻発すると開始14分で許した2ゴールに動揺したのか、普段通りのパフォーマンスが発揮できなかった特異的なもののように映る。
そのため個人的には2点のリードを奪いながら引き分けに終わってしまったリバプール戦とウェストハム戦こそ、アーセナルの課題が浮き彫りになったように思える。どちらの試合も主導権を握っていたが、失点で流れを手放してしまうと押し込まれて追いつかれてしまう。言い換えれば試合序盤の支配力を持続できないのが、今のアーセナルが抱える課題である。……
Profile
せこ
野球部だった高校時代の2006年、ドイツW杯をきっかけにサッカーにハマる。たまたま目についたアンリがきっかけでそのままアーセナルファンに。その後、川崎フロンターレサポーターの友人の誘いがきっかけで、2012年前後からJリーグも見るように。2018年より趣味でアーセナル、川崎フロンターレを中心にJリーグと欧州サッカーのマッチレビューを書く。サッカーと同じくらい乃木坂46を愛している。