「メッシによるメッシのためのチーム」がついに!新相棒アルバレス、最高の26人と指導陣、4500万人の国民と共に頂点へ【アルゼンチン 3-0 クロアチア】
一つになった「メッシのチーム」の今大会ベストゲーム。34分にメッシ(PK)、39分と69分にフリアン・アルバレスが決めた3ゴールでクロアチアに快勝したアルゼンチンが、2大会ぶりの決勝進出で、1986年大会以来3度目のW杯優勝に王手をかけた。
準決勝でクロアチアを破って決勝進出を決めた後、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスでは記念塔オベリスコの周辺に10万人を超える群衆が集結し、世界一幅の広い道路として知られる7月9日大通りがぎっしり埋め尽くされた。首都に次ぐ第2の都市コルドバでも街の中心部にある建造物パティオ・オルモスに、メッシの故郷ロサリオでは市の象徴である国旗記念塔に大勢の人が集まり、祝福はクロアチア戦が終わった夕刻から翌朝まで続いた。政治的、宗教的、社会的なあらゆる思想の相違による分断など、誰も気にしない。母国の代表チームが世界一の座を争う頂点に達した歓喜は、国民の心を一つにした。2014年大会でファイナリストになった時とまったく同じ現象だ。
だが今回、8年前にはなかったことがアルゼンチン全土で起きている。人々がリオネル・メッシと代表チームを称え、その思いをチャントと歌で情熱的に表現しているのだ。過去、ここまで国民から支持され、信頼され、愛された代表チームがあっただろうか。
メッシの実力が生かされないまま勝ち進んだ2014年大会とは異なり、今回のアルゼンチン代表は「メッシによるメッシのためのチーム」となっている。初戦(対サウジアラビア)で屈辱的な敗北を味わった後、国民に「僕たちを信じてほしい」と呼びかけたメッシは、すべての試合で勝利への道を切り開き、チームはそのリーダーの先導によって試合を重ねるごとに完成度を高めてきた。
そして準決勝では、戦術、組織、技術、メンタルのあらゆる側面でクロアチアを上回って快勝。アルゼンチン国内の多くのメディアから「今大会におけるベストゲーム」と絶賛され、今の代表チームがメッシに値するメンバーによって構成されていることが証明されたのである。
今大会初の[4-4-2]。エスカローニの選択が奏功
快勝を遂げたとはいえ、新旧のタレントが巧みに融合したクロアチアはアルゼンチンにとって非常に手強い相手だった。リオネル・エスカローニ監督はルカ・モドリッチが支配する中盤の攻防をコントロールすることが鍵と見て、今大会では初めてとなる[4-4-2]のフォーメーションを採用。ここまでの決勝トーナメント2試合で守備に貢献してきたDFリサンドロ・マルティネスを外してMFレアンドロ・パレデスを入れることで中盤の安定を図る他、準々決勝のオランダ戦での走行距離が15.42kmに達したエンソ・フェルナンデスに攻撃参加の機会を与えるプランである。
この決断に至る前、エスカローニ監督の頭の中には、負傷からほぼ完全に回復していたアンヘル・ディ・マリアを先発メンバーに入れてフォーメーションを[4-3-3]に戻すアイディアもあったという。中盤の要であるロドリゴ・デ・パウルがまだ100%のコンディションにないため、左サイドの負担を軽減させるために立ち上がりからディ・マリアを起用することを考え、前日のゲーム練習でも試された布陣だった。
だが幸いにも[4-4-2]の選択は正解だった。守備陣はお馴染みのナウエル・モリーナ、クリスティアン・ロメロ、ニコラス・オタメンディと、累積警告から欠場となったマルコス・アクーニャの代わりにニコラス・タグリアフィコ。中盤にはデ・パウルとパレデスに、今や不動のレギュラーメンバーとなったフェルナンデスとアレクシス・マカリステル、そして前線はメッシとフリアン・アルバレスの2人だ。
中盤での慎重な動きから、なかなかゴール前まで到達しない状態のことをアルゼンチンでは「チェスのような試合」と呼ぶが、前半はまさしくチェスのような展開となった。ボールの支配権をクロアチアに譲り、25分までシュートがなく、ポゼッションが得意なアルゼンチンにとっては不慣れな状況だったが、クロアチアにも深さが見られず危険は感じられない。
やや下がり気味に築いたブロックで相手のパスワークの阻止を試みながら慎重にチャンスをうかがっていたアルゼンチンに先制点が生まれたのは34分。センターライン上にいたフェルナンデスはボールを受けた瞬間、ゴール目がけて走り始めたアルバレスに気づいてスルーパス。アルバレスはそのボールを追いながらペナルティエリア内へ攻め上がり、クロアチアのGKドミニク・リバコビッチに倒されてPKを獲得した。リーベルプレートのリザーブチームで初めてコンビを組み、その後トップチームで一緒に過ごした6カ月の間に連係に磨きをかけたフェルナンデスとアルバレスが阿吽の呼吸で生み出したチャンスだった。
8万9000人の観衆の大半を占めたアルゼンチンサポーターが見守る中、PKを蹴るのはメッシ。力強く放ったシュートがゴール右上に突き刺さるや、ルサイル・スタジアムはメッシ・コールに包まれた。
アルバレスがメッシにとってアグエロのような存在に
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Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。