いい意味で「メッシのチーム」であることを示したアルゼンチンが準々決勝へ【アルゼンチン 2-1 オーストラリア】
翌日更新! カタールW杯注目試合レビュー
ここまで全試合で先発していたアンヘル・ディ・マリアを欠きオーストラリア戦に臨んだアルゼンチン代表をベスト8へ導いたのはやはりこの男、リオネル・メッシだった。
オーストラリア戦は、アルゼンチンが良い意味で「リオネル・メッシのチーム」であることを証明した試合となった。メッシを称えずして、この勝利を語るわけにはいかない。
自身のキャリア通算1000試合目の節目となった舞台で、ハットトリックをやってのけたわけでもなく、華麗なドリブルシュートからのゴールをマークしたわけでもなかったが、メッシは文字通りチームを背負い、均衡を破るゴールを決め、奮闘し、仲間を励まし、あらゆる場面で終始リーダーらしさを発揮した。アルゼンチン国内では「リオネル・エスカローニ監督の指揮下におけるベストバージョンのメッシ」と評価する声が多く、有力紙『ラ・ナシオン』は「代表史上最も賢明で、最も勇敢なメッシが全力でチームを率いた」という見出しをつけてキャプテンの健闘を称賛した。
チームにあった2つの懸念
GSを首位で通過し、次の対戦相手がオーストラリアに確定した直後から、エスカローニ監督のチームには2つの大きな懸念材料があった。1つは選手たちのフィジカル面、もう1つはアンヘル・ディ・マリアのコンディションだ。
試合の前日会見で、エスカローニ監督は決勝トーナメント1回戦がポーランド戦の3日後に行われることへの不満を次のように述べた。
「馬鹿げたことと思われるかもしれないが、オーストラリアがグループ2位の状態で(GS最終戦を)18時にプレーした一方、我われは1位でありながら22時にプレーして、寝たのは翌朝4時だった。それからほんの48時間と少し後で次の試合が行われる場合、これは大いに影響する」
12日間に4試合を消化する日程の厳しさはアルゼンチンだけに課された試練ではないものの、フィジカルコンディション次第で先発メンバーを選ぶ状況下では軽視できないテーマ。しかもそこには、ポーランド戦で左太腿を痛めたディ・マリアのコンディションも関係してくる。例え数時間の差であっても、だ。
ディ・マリアの回復はエスカローニ監督もギリギリまで待ったが、最終的に先発から外しただけでなく、試合ではユニフォームさえも着せなかった。あとになってエスカローニ監督はこの決断について「ディ・マリアはプレーできるコンディションになく、彼をベンチに置いておくのは(自分にとって)誘惑になるとわかっていたから、無茶なことをしないために着替えもさせなかった」と説明している。
それまで攻撃面で決定的な役目を果たし好調だったディ・マリアを欠いたのは大きな痛手だったが、エスカローニ監督はいつもの[4−3−3]]の基本フォーメーション(厳密にはメッシを偽9番に置く[4−1−4−1])を採用しながら、ディ・マリアの代役にアレハンドロ・ゴメスを抜擢。その他は全員がポーランド戦と同じ先発メンバーとなった。……
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。