REGULAR

逆境のドイツがフィジカルで圧倒し、若いスペインは勝ち点1に安堵する【スペイン1-1ドイツ】

2022.11.28

翌日更新! カタールW杯注目試合レビュー

後半に途中出場のモラタのゴールでスペインが先制すると、ドイツは83分、同じく途中出場のフュルクルクが同点ゴール。グループEの最注目の一戦は両チームが勝ち点1を分け合った。

 明らかに心臓に悪い、胃が痛くなるような試合だった。日本の勝ち上がりをサポートするために「負けだけは駄目だ」と勝手に力んでいたので余計に疲れたこともある。

 62分に先制し83分までリードしていたわけだから「もったいない」と言えるかもしれないが、終了寸前にGKウナイ・シモンが飛び出しミスをしゴールが空になる絶対的なピンチがあり、アディショナルタイムにCK2本を上げられた末にホイッスルに救われたのだから、「1ポイントを取れて良かった」というのが正直な感想だ。

スペインが克服したはずの「サイズ問題」

 先制してもボールを回して時間を使い、安全に試合を終わらせられなかったのは「若さのせい」と言えるかもしれない。

 リード後に投入されたニコはカウンター要員だった。引き分け狙いで前に出て来るドイツの裏を突いて駄目押し点を挙げるために、それができなくともボールを前でキープして時間を稼ぐために投入された。しかし、最初のぶつかり合いでボールを失うと持ち前の奔放さも失った。脅えたようなプレーで足の入れ合いにことごとく敗れ、倒されては審判の顔を見る。スペインの右サイドはカウンターの突破口になるはずが、ボールロストから押し込まれるドイツの侵入路になっていた。もう一人、守備固めとして入ったバルデはファーストプレーでトラップをミス。それがラポルトのボールロストを呼び、フェルクルクの同点ゴールを生むことになった。

サッカーをしているサッカー選手自動的に生成された説明
ドイツの勢いに気圧されたニコ・ウィリアムス(左)はカウンター要員としての役割をまっとうできなかった

 ニコは20歳、バルデは19歳。リードされ目の色が変わったドイツ、同点で勢いに乗ったドイツに気圧されるな、と言う方が無理である。アメリカに次ぐ大会二番目の若いチームが逆境でどう振る舞うかは未知数だった。グラウンド上にリーダーが不在で、唯一のリーダーはベンチから指揮を執っていたのだが、そのルイス・エンリケの交代策が外れてしまっては手の打ちようがない。カウンターで得点できそうなシーンは皆無で、いつ失点してもおかしくないシーンが続いた。試合を落ち着かせることはリード後も、同点後もまったくできなかった。

 明らかになったのは、やはりフィジカルの差である。……

残り:2,560文字/全文:3,587文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

RANKING