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伊沢拓司とワールドカップ:「がんばれニッポン!」に乗り切れない“逆張り派”のためのW杯観戦ガイド

2022.11.19

私とワールドカップ #1

サッカーと出会う機会になったり、熱中するきっかけになったり。ワールドカップは、多くの人の人生に影響を与える。サッカー好きな著名人の方々に、ワールドカップの思い出や、来たるカタール大会の楽しみ方について語ってもらう。第1回はfootballistaでもおなじみ、クイズプレーヤーとしてマルチに活躍する『QuizKnock』CEOで熱狂的スパーズファンの伊沢拓司さんが、今回は“逆張り党代表”として「斜に構えた観戦ポイント」を綴ってくれた。

 いよいよ開幕が間近に迫ったカタールW杯。世界最大規模の祭りに向けて、日本国内のボルテージも上がってきている。

 とはいえ、突如として盛り上がってくる「がんばれニッポン!」的な雰囲気に乗り切れない人は、サッカーファン内外にも一定程度いるのではないだろうか。加えて、どうせ世界中のサッカーが見られる4年に1度の機会なのだから、少しばかりツウな見方をしてみたいという人もいるだろう。地上波での放送が減ってしまった今大会においては、よりそうした「プラスワンの情報」が減ってしまうことが懸念される。とりあえず青い服を着て盛り上がれば楽しい、という遊び方ができない一部の人間にとっては苦戦が予想される世情だ。

 かくいう私も、そんな「逆張り派」の一人である。もちろん日本代表を応援してはいるが、テレビの特集などを見ていても「たくさんあるW杯の魅力や見方を、どうにかして楽しく伝えられないものか」などと考えてしまう。思えば、我が心のクラブ=トッテナム・ホットスパーを応援するきっかけも「メジャーなクラブを応援したくはない」というところからだった。今ではすっかり国内のファンも増えたし、健全経営とピッチでの成功を両取りした優良クラブだし、そもそも世界規模では超人気チームなのだが、日本国内ではなかなかそういう情報に気づけないものだ。もう少し、ギャクバリストに優しい報道があってもいいのに、と常に考えている。

 逆に言えば、いざ情報さえ得てしまえば、フットボールを、W杯を「逆張り的に」楽しめる要素はたくさんある。せっかくのW杯だからより多くの試合で盛り上がりたい、人よりコアなポイントで盛り上がりたい、これを機にスポーツバーでワンチャンものにしたい……今回はそんな難儀な皆様のために、私なりの「斜に構えた観戦ポイント」をいくつかお伝えしたい。

応援されてない国を応援したい

 「どこの国に注目して観るべきか?」というのは、W杯観戦における一丁目一番地であろう。ギャクバリストなら、まずここで誰も挙げない名前を出して、違いを見せつけたいところだ。

 私のイチオシは、ずばりガーナ代表である。なんとガーナ代表、予選と本戦でメンバーがガラリと変わっている。ガーナにルーツを持つものの、複数国籍を持っているなどの理由で未招集だった選手たちと交渉し、一大補強を敢行したのだ。W杯出場という甘い蜜に惹かれ、欧州の有名リーグで活躍する選手たちが一人また一人とメンバーに加わったことで、ガーナは「戦いの中で成長する(ただし盤外戦術で)」激アツチームに変貌を遂げた。

 もともと代表を支えていたトーマス・パーティやアイェウ兄弟らに加え、イニャキ・ウィリアムスやモハメド・サリス、タリク・ランプティが入ったことで、各ポジションに一線級がそろった。アヤックスの新鋭モハメド・クドゥスの推進力にも注目だ。どのチームが勝ち抜けてもおかしくないグループHに入ったこともあり、すべての試合が注目カードである。今のうちからガーナ代表、およびグループHを推しておけば逆張り大成功間違いなしだろう。

ガーナ代表は2大会ぶり4回目のW杯出場。グループHでポルトガル、韓国、ウルグアイと対戦する

……

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Profile

伊沢 拓司

私立開成中学校・高等学校、東京大学経済学部卒業。中学時代より開成学園クイズ研究部に所属し開成高校時代には、全国高等学校クイズ選手権史上初の個人2連覇を達成。2016年に、「楽しいから始まる学び」をコンセプトに立ち上げたWebメディア『QuizKnock』で編集長を務め、登録者数200万人を超える同YouTubeチャンネルの企画・出演を行う。2019年には株式会社QuizKnockを設立しCEOに就任。クイズプレーヤーとしてテレビ出演や講演会など多方面で活動中。ワタナベエンターテインメント所属。

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