『ガーディアン』紙コラボ企画!現地識者のW杯出場国ガイド③「オランダ」
World Cup 2022:Guardian Experts’ Network – Netherlands Team Guide
英国の高級紙『ガーディアン』の呼びかけのもと、出場32カ国の一流メディアが集結し、それぞれの代表チーム情報を共有する「カタールW杯コラボレーション企画」。footballistaは2018年W杯、2019年女子W杯に続き“日本代表”として参加した。内部事情に通じるエキスパートが寄稿した、主要国のチームガイドをシリーズでお届けしよう。
The Netherlands team guide was written by Wilber Hack
He writes for De Telegraaf (https://www.telegraaf.nl/sport)
The plan|チーム状況
来年オランダで開催されるUEFAネーションズリーグのファイナル4進出を決めたオランダ代表は、好調を維持したままW杯に乗り込む。9月の同大会リーグA最終節ではフィルジル・ファン・ダイクがヘディング弾を決め、ベルギーに1-0で勝利を収めた。ここ数カ月間で[5-3-2]システムはチームにすっかり定着し、うまく機能しているように見える。
オランダ代表にこの新しいシステムが導入されたのは今年の3月だったが、ルイ・ファン・ハール監督が[5-3-2]システムを採用したのはこれが初めてではない。オランイェ(オランダ代表の愛称)が準決勝に進出し、3位決定戦でホスト国ブラジルを3-0で下した2014年W杯の時にも、ファン・ハール監督はこのシステムで戦っていた。
8年前もそうだったが、オランダが伝統の[4-3-3]を捨てたことは批判を招いた。キャプテンのファン・ダイクでさえ[5-3-2]への変更は歓迎できるものではなかったと公言し、こう述べている。「ファン・ハール監督は、僕とは違う意見の持ち主だ。監督はこのシステムに自信を持っている。結果を出しているんだから、当然だよね」
ファン・ハール監督自身は「オランダ派」と呼ばれる攻撃的スタイルを生み出した[4-3-3]哲学の熱心な信奉者だが、新しいものを進んで取り入れる姿勢も失っていない。71歳の代表監督は、「監督としてのキャリアが長くなるに従って、ますます[5-3-2]システムの良さがわかるようになってきた。このシステムなら、攻撃も守備もうまくいく。ピッチの至るところで相手を困らせることができる。うまくコントロールできればカウンターを浴びるリスクも少ない。3人のDFで守るんだからね」と述べている。
今ではファン・ハール監督は、[5-3-2]システムが3人のアタッカーを並べるシステムに勝ると考えている。「[4-3-3]システムを使っていた時は、ピッチのあちこちで三角形を作るのがベストだと考えていて、他のシステムの良さに気付かなかった。だが、[5-3-2]システムの方がチームのバランスが良くなることに気付いた。[3-4-3]でもいいかもしれない」
チームは好調だが、フレンキー・デ・ヨンクやメンフィス・デパイのようなクリエイティブな仕事ができる選手の中に負傷者が出ると、プレースタイルが機能しなくなる可能性はある。実際、デ・ヨンクとデパイはともに今シーズン筋肉系のケガを負っている。ファン・ハールは完全にフィットしていない選手は起用しない監督だが、この2人に関しては例外になるかもしれない。オランイェの選手層はそこまで厚くはないからだ。選手層が厚くないという事実は、カタールでオランダが勝ち進んでいくにつれて、問題になるかもしれない。
The coach|監督
ルイ・ファン・ハール(Louis van Gaal)
71歳|オランダ国籍|2021年8月就任……