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【連載】前人未到の“3冠”の背景。風間八宏はセレッソ大阪アカデミーに何をもたらした?

2022.10.06

「風間八宏×セレッソ大阪」育成革命の最前線 第1回

「ここまで早く成果が出るものか」と驚いた。日本サッカー界が誇る“奇才” 風間八宏がセレッソ大阪アカデミーの技術委員長に就任して2年目を迎えた2022年、U-18とU-15、そしてU-18ガールズまでもが夏の全国大会であるクラブユース選手権の頂点に立った。カテゴリーをまたいだ“3冠”は史上初である。

U-15とU-18が見せたのは、まさに川崎フロンターレと名古屋グランパスで体現してきた“風間サッカー”だった。しかし、実際に選手を指導するのは本人ではない。彼が直接現場に入ることなく、なぜこのような現象が起きたのか――?

本連載では風間八宏がセレッソ大阪で取り組む育成改革の実態に迫る。第1回は、就任後に行なった2つのアプローチについて解説してもらおう。

セレッソが求める「指導者の質」とは?


――風間さんがセレッソに来て最初に取り組んだのは、どういったことだったのでしょうか?

 「重要なことは指導者の質の向上と、全体の仕組みづくりです。“グラウンドをどう使うか”であったり、“指導者の質とはなんぞや” を伝えること。だから、1年目からアカデミーとスクールの指導者を対象に定期的に指導者講習会を行っています。最初は頼まれたところに3日以上おもむいて私が直接指導をすることもありました。それによって選手がどう変わっていくかを実際に体験しながら理解してもらう。スクールで幼稚園生を教えることもありましたよ。ただ、“何でそうなるか” という根本的な部分をきちんと咀嚼して指導を続けていくことは簡単ではないから、それは指導者講習会でも補っていきました」


――指導者講習会の中身というのは、体系化されているものでしょうか?

 「その場に行って、参加者の様子を見た上で決めています。指導者に対して指導テクニックを教えるところにたどり着くのは、まだだいぶ先かと思います。サッカーへの理解をもっと深めてもらうことが大事。あらかじめ決まったプログラムをこなすのではなく、その場にいる人の表情や雰囲気を見れば、どこまで理解しているかはわかるじゃないですか。伝わらないと意味がないので、すべての指導者に合った速度で変化をつけています。もちろん、言語化や映像化したものはきちんとありますが、現場の指導者と向き合い続ける中で結果的に(風間氏がいなくても誰でも使えるような)体系化されたものが完成していけばいいと考えています」


――その中で自然と指導者の質も高まっていくと。

 「最初は『止める』『蹴る』の話をしてもなかなか伝わらないんです。実際に(島岡)健太(U-18監督)の練習を見せても伝わらないし、“見えていない”ことがわかる。こちらからすれば何が悪いのかも、“ここを変えればチームが変わるな”というのも見えているのですが。そこの“目”を近づけるために、指導者講習会で体験してもらうことで共通理解として落とし込みました。ベースとしてのサッカーの6項目(『止める』『蹴る』『運ぶ』『外す』『受ける』『見る・見ない』)を知ることと、それがどう試合と結びついたか。その2つをどうセットで考えられるか、ずっとそれを伝えています」


――指導者の目を揃えていくということですね。

 「3つのU-15のチームが、同じような状況に陥ってると感じたことがありました。指導者が意識させた結果、ボールがだいぶ止まるようになった。最初はまったく止められなかったけれど、できるようになると余裕が生まれます。でも、そうやって手に入れた『時間の貯金』を前線まで持ってく術がない。だから、ずっと後ろでボールを回して、やられてしまうという同じ状態になっていました。次の段階として『その時間の貯金をどう生かすか』という話や、小さなピッチの中ではできるのにグリッドが大きくなるとボールが回らなくなってしまう現象があったとしたら、その解決策を指導者講習で伝えていきます。

 あとは技術については徹底します。そこは指導者が気づかなければいけない。『止める』 『蹴る』といった言葉ばかりを追いかけても意味がなく、『なぜ、それが武器になるのか』を伝えることが重要です。子どもたちに『これは武器になるんだ』『これを磨けば“時間”を作れるんだ』と知ってもらわないといけません」

Photo: ©CEREZO OSAKA SPORTS CLUB

カテゴリーの壁を取り払い、全員が連携できるアカデミーへ


――全体の“仕組みづくり” についても教えてください。
……

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Profile

竹中 玲央奈

“現場主義”を貫く1989年生まれのロンドン世代。大学在学時に風間八宏率いる筑波大学に魅せられ取材活動を開始。2012年から2016年までサッカー専門誌『エル・ゴラッソ 』で湘南と川崎Fを担当し、以後は大学サッカーを中心に中学、高校、女子と幅広い現場に足を運ぶ。㈱Link Sports スポーツデジタルマーケティング部部長。複数の自社メディアや外部スポーツコンテンツ・広告の制作にも携わる。愛するクラブはヴェルダー・ブレーメン。

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