史上最年少28歳でのブンデスリーガ監督デビューから6年、当代屈指の名将の一人に数えられるところまで上り詰めた指揮官ユリアン・ナーゲルスマンの「“6番”の場所で横パスしてはいけない 」「ドリブル後のパスは、ドリブルで移動した距離より長くする」といったピッチ内でのプレー原則はもちろん、組織マネジメントの方法論や価値観に至るまで彼が実践している52の“原則”に迫った『ナーゲルスマン流52の原則』がこのたび重版! 出来を記念して、書籍内から原則の1つ『ボックス占拠』を紹介する。
自陣でのビルドアップに成功して敵陣に侵入したら、いよいよシュートを狙うアタッキングの局面だ。前項では、ビルドアップフェーズにおける 「狭いポジショナルプレー」(逆クリスマスツリー型)に焦点を当てた。次はエリアを前進させ、アタッキングフェーズにおける 「狭いポジショナルプレー」を取り上げよう。
すでに 「最小限の幅」の原則で触れたように、ナーゲルスマンはアタッキングフェーズにおいて、外側に位置する選手が中央へ入っていくことを求めている。
バイエルンでの練習初日、ナーゲルスマンは紅白戦を途中でストップすると選手たちにこう訴えた。
「ボールと反対側にいる選手は、極端に内側に入ろう!」
「ウイングバックは広がり過ぎてはいけない」
「最終局面ではさらに内側に入って、素早く前へ行け!」
ビルドアップ時は「逆クリスマスツリー型」だったが、ゴールに近づくほどに外側の選手が内側に入って行くのが、アタッキング時の 「狭いポジショナルプレー」だ。
『DAZN』の番組『デコーデット』で、ナーゲルスマンはバルセロナ戦の56分で画面を一時停止し、左SBのデイビスのポジショニングを絶賛した。デイビスが左ハーフスペースでパスを受け、シュートを打った場面(下図)だ。……
Profile
木崎 伸也
1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。