丁寧さがスピードを生む。レアンドロ×永井謙佑が見せた繊細かつ豪快なゴール
風間八宏の真・ユニット論 第14回
「ボールをトラップしたのに“止まっていない”」「止める、外すの目をそろえる」など独自の技術論を突き詰めた指導者として、日本で唯一無二の存在となっている風間八宏。彼の技術論は個人で完結しているわけではなく、人と人の意思の疎通や駆け引きがベースになっている。個人の技術解説でもなく、チームの戦術解説でもない、数人の集団で構成されるユニットの動きは、サッカー解説の盲点になっているのではないか――名手たちの隠れた凄みを、“局面を切り取る達人”が斬る!
第14回はFC東京のアタッカーユニットが見せた緻密な技術にフォーカスを当てる。第27節の神戸戦で見せた、レアンドロと永井謙佑のボックス内でのワンツーだ。欧州の最前線でプレー経験のあるフェルマーレンを緻密な技術によって生まれた速さで翻弄したこの場面を、風間氏に紐解いてもらおう。(取材日:9月14日)
Pick up MATCH
2021.08.28
Vissel Kobe 0-1 FC Tokyo|27|J1 LEAGUE
83′ Leandro
レアンドロの止める技術、打つ技術
いかに「レアンドロがうまく止めたか」がこのゴールのポイントになります。レアンドロがしっかりと自分がコントロールできる場所に止めたから、彼に出した後に背後に抜けた田川亨介も「出てくる」と信じて走り出せた。一方で敵はボックス内でボールがレアンドロに完全に支配されているので、プレッシャーにいけません。加えて、周りの選手(田川)が走ってくるのでそれに対応しなければいけない。これによって、永井謙佑のところにスペースができました。
一見すると密集地帯で受けたレアンドロには考えてプレーする時間と距離がなさそうですが、最初にしっかりと足下にボールを収めたことで時間が生まれ、連動した田川が背後に抜け出したことによって神戸のディフェンスの目が田川に引き寄せられました。そして、最終的にレアンドロがシュートを打ったフェルマーレンの背中にスペースができた。これも、最初にレアンドロがうまく止めて、かつ田川が動いてディフェンスを動かしたことで生まれたものです。
このフェルマーレンの背中のスペースは小さいようで相当、大きいです。ここに入り込んでシュートを打った時、レアンドロはボールをしっかりと見ている。彼の背中を取れたらシュートを打つことは決めていたと思います。リターンを受けて、「止める」選択肢はレアンドロの中になかったはずです。
コースに関しては流して右隅を狙うには時間がなく、足下の同サイドのコースだとディフェンスの足もぎりぎり出てくる。となると、同サイドの上(ニア上)しかない。この状況だと下にコースは作れないですから。右の隅にはあるけど、ボールをもう少し流したらディフェンスが足を出せるようになる。瞬時にこのコースを見つけて射抜いた、素晴らしいシュートでもあります。GKにチャンスはないですね。
ボールを止める=ディフェンスを支配する
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Profile
竹中 玲央奈
“現場主義”を貫く1989年生まれのロンドン世代。大学在学時に風間八宏率いる筑波大学に魅せられ取材活動を開始。2012年から2016年までサッカー専門誌『エル・ゴラッソ 』で湘南と川崎Fを担当し、以後は大学サッカーを中心に中学、高校、女子と幅広い現場に足を運ぶ。㈱Link Sports スポーツデジタルマーケティング部部長。複数の自社メディアや外部スポーツコンテンツ・広告の制作にも携わる。愛するクラブはヴェルダー・ブレーメン。