10月31日、ペルー代表を率いるリカルド・ガレカ監督は、W杯南米予選の第3節チリ戦(現地時間11月13日)、第4節アルゼンチン戦(同11月17日)に向けたメンバー26名を発表した。そのメンバーに初めて名を連ねた30歳のストライカーが注目を集めている。
4年越しの代表入りが実現
そのストライカーとは、イタリアのベネベントに所属するジャンルカ・ラパドゥーラ。キャリアの大半をイタリアのクラブで過ごし、2016-17シーズンにはミランで本田圭佑とも共演している。
ラパドゥーラはイタリア人の父とペルー人の母の間にトリノで生まれ育った。いわば二重国籍の選手だ。2016年11月にはロシアW杯予選に向けてイタリア代表に招集されたものの、出場機会は得られず、翌2017年5月にB代表チームでサンマリノとのフレンドリーマッチに出場したのが唯一の代表経験。そのため、ペルー代表への招集には支障がない状況だった。
ガレカ監督は以前からラパドゥーラ招集の可能性を探っており、2016年のコパ・アメリカ・センテナリオの際にも招集レターを送っていた。この時はイタリア代表入りを希望していたラパドゥーラ側から断られたものの、その後もコンタクトは取り続けていたという。
そして今年10月、ラパドゥーラがガレカ監督にペルー代表入りの意思を通達。ペルーサッカー連盟(FPF)が身分証明書などの必要書類を早急に取りそろえて招集に向けての準備を整えた。そして10月31日、母親の祖国への上陸経験を持たないままメンバー入りの運びとなったのである。
大エース2人の代役となれるか
ペルーでは大エースのパオロ・ゲレーロが8月に右膝前十字靭帯断裂の大ケガを負い、長期離脱中。ジェフェルソン・ファルファンも膝のケガを抱えており、今回は招集されていない。点取り屋不在というチーム状況もラパドゥーラの代表入りを後押ししたと言えるだろう。
そんなラパドゥーラについてコメントを求められたゲレーロは「彼のことを祝福したい」と語り、ファルファンも「所属クラブで多くのゴールを決めているし、彼のような選手が代表入りしてくれるのは歓迎すべきことだ」とコメントしている。
また、メンバー入りが発表された際には、ペルーに住むラパドゥーラの親戚の家の周りに何人かのサポーターが集結してチャントを演奏するなど、ペルー国内でも期待が広がっている。
現在、FIFAがラパドゥーラのペルー代表入りが可能かどうか精査している状況だが、事前の通達では「問題なし」となっており、数日中に正式な許可が下りるはず。ペルーは10月の2試合で1勝1分(パラグアイに2-2、ブラジルに2-4)と厳しいスタートを切っており、次に対戦するチリは積年のライバルと目される絶対に負けられない相手だ。
ベネベントでは今季ここまで5試合に出場し、2得点を記録しているラパドゥーラ。イタリア産のストライカーは苦しむペルーの救世主になれるだろうか。
Photo: Getty Images
Profile
池田 敏明
長野県生まれ、埼玉県育ち。大学院でインカ帝国史を研究し、博士前期課程修了後に海外サッカー専門誌の編集者に。その後、独立してフリーランスのライター、エディター、スペイン語の翻訳家等として活動し、現在に至る。