10月23日、アンドレ・ジャルジーニ監督によるU-23ブラジル代表の招集メンバー発表会見が行われた。11月のFIFA国際マッチウィークを生かしたサウジアラビアでの2つの親善試合、サウジアラビア戦(11月13日)とエジプト戦(同16日)のためのメンバーとなる。
フル代表経験者も招集
今年1月18日から2月9日にかけて行われた東京五輪南米予選で準優勝し、五輪出場枠を獲得した後、3月のFIFA国際マッチウィークは、新型コロナウイルスのパンデミック発生のためにキャンセルされた。そのため、約9カ月ぶりの集合となる。
今回は外国のクラブでプレーする選手たちに限定したメンバー構成となっている。ブルーノ・ギマランイス(リヨン)、ロドリゴ(レアル・マドリー)のように、すでにチッチ監督のフル代表に招集され始めている選手や、レイニエル(Rマドリー)、アントニー(アヤックス)、ペドリーニョ(ベンフィカ)をはじめ、五輪予選の主力となった選手も名を連ねている。
「各ポジションに3、4人ずつの選手を、平行して観察し続けている」と語るジャルジーニは、国内組、海外組にかかわらず、今後も招集する予定の選手たちがいること、そして、まだ今回のメンバーが五輪に向けた最有力候補というわけではないことを強調した。
W杯南米予選が進行し、来年は6月11日から7月10日にかけてコパ・アメリカも開催されることから、五輪代表とフル代表の間での選手の綱引きも注目される。
クーニャはU-23に参加
五輪予選で得点王となったマテウス・クーニャ(ヘルタ・ベルリン)も、10月の南米予選に招集され、11月はU-23に戻る形となったため、話題となった。
マテウス・クーニャは18歳の時にFCシオン(スイス)でプロになったため、ブラジルでは無名だった。それが、U-23代表に招集され始めるとすぐに、その得点力はもちろん、陽気な性格を発揮し、現在21歳にしてU-23代表のリーダーの1人になっている。
FIFA国際マッチウィークではない時期に行われた五輪予選では、クラブが選手を送り出す義務はなかったのだが、彼自身が当時所属していたRBライプツィヒと話をし、代表合流を実現させた。
ジャルジーニは、フル代表との兼ね合いには特にはっきりした回答をしなかったものの、クーニャがフル代表にも値する選手であることを明言した。
「我われは選手たちの技術的なポテンシャルだけではなく、セレソンでプレーすることへの決意や目の輝き、意欲、そういうものを感じ取ることができる。クーニャもそういう選手だ。五輪予選では、自分の経歴の中で“代表”にプライオリティを置きたいということを、クラブにしっかりと伝えてくれた。自分が求めるものがはっきりしているんだ。そして、ポジティブな結果を出している。ここ(代表)でもクラブでも成長を続け、輝かしい未来を築くはずだ」
五輪本番で日本と対戦も
ジャルジーニはU−23とともにU−20代表も兼任している。10月21日からの合宿を皮切りに、来年2月に開催されるU−20南米選手権の準備もスタートしており、両チームの兼ね合いについてこう説明している。
「U-20とU-23については、もちろん選手たちの特徴を尊重するため、同じというのはありえないが、非常に近い形で試合のアイデアを植え付けていくつもりだ。そして、ブラジル代表のユニフォームにふさわしい試合をすること、良いプレーをし、結果を出すために全力を注ぐことをアイデンティティとする、すべての年代の代表を、サポーターは誇りに思えるはずだ」
この会見の2日前、日本サッカー協会の反町康治技術委員長が、東京五輪に向けた強化の一環として来年、五輪出場国を日本に招いて親善試合をしたい意向を語った、というニュースがあった。そこで、ブラジルとして五輪前に日本と対戦することに興味があるかを聞いてみた。
両国のこの世代は、昨年6月のトゥーロン国際大会で決勝を戦い1-1、PK戦でブラジルがタイトルを勝ち取った。また、10月には親善試合を行い、ホームのブラジルが2-3で敗れている。
「我われも、基本的には五輪出場国と試合をしたい。そして、相手のクオリティが高ければ高いほど良い。なおかつ、同じ相手との試合を繰り返すのではなく、違った大陸の、違ったベースのサッカーをする相手と対戦したいと考えているんだ」
この回答を聞く限り、親善試合は実現しないのかもしれない。ただ、彼はこうも付け加えている。
「我われはこれまで18試合やってきて、敗戦は2つ。そのうちの1つが日本戦だ。あのレベルとあの強さを見れば、五輪のために非常に良い準備をしていることがうかがえる。五輪で日本と対戦する確率は非常に高いと思っているよ。我われは必ずや決勝トーナメントに進出し、メダルを争う位置に到達するつもりだし、その段階で対戦する相手の1つが、恐らく日本になるだろう」
力強さと相手への尊重。五輪準備の再スタートに、指揮官は燃えている。
Photos: Kiyomi Fujiwara, Lucas Figueiredo/CBF
Profile
藤原 清美
2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。