新型コロナウイルス禍の影響により3月中旬から休止されていたアルゼンチン国内のリーグ戦が、7カ月半もの中断期間を経てようやく開幕することになった。
サッカー産業への大打撃を回避
しかし、コロナ禍が落ち着いたわけではない。アルゼンチン国内では10月19日に新型コロナ感染者の累計がついに100万人を突破。3月20日に政府による強制隔離が発令されて以来、増加の一途をたどっており、感染拡大の勢いは一向に収まっていない。
では、どのような経緯で開幕が決まったのだろうか。
AFA(アルゼンチンサッカー協会)及び1部リーグを運営するLPF(リーガ・プロフェシオナル・デル・フットボール)は当初、保健省と観光スポーツ省からの忠告に従い、アルゼンチン全土で検疫フェーズ4(5段階のうち大半の制限が緩和される進歩的再開フェーズ)に入らなければリーグ戦は開催しない方針を明らかにしていた。
だがその後、国内の感染状況が悪化する一方である現実に直面し、このまま停滞が続けば国内のサッカー産業が大きな打撃を受けると判断。
世界各地で感染防止プロトコルを厳守しながら試合が開催されていることや、9月中旬からコパ・リベルタドーレスが再開し、いくつかの感染例がある中で都度対応しながら進行していることなどを理由に挙げて政府側に多大な圧力をかけた結果、10月30日の新シーズン開幕にこぎつけたというわけだ。
政府としても、ただでさえ長期の強制隔離措置に対する反感が高まる中、アルゼンチン国民の最大の娯楽であるサッカーをこれ以上中断したままにしておいては支持率にも影響を及ぼすため、承諾せざるを得ない立場に置かれたも同然、というのが大方の見解である。
スタートは10月30日
とはいえ、来シーズンから2月開幕となるため、通常のリーグ戦形式を実施するには日数が足りない。そのため、10月30日から始まる大会は短期のトーナメント形式となり、その名もコパ・デ・ラ・リーガ・プロフェシオナル(LPF杯)。
まず1部リーグの24チームが4チームずつ6つのグループに分かれてホーム&アウェーの総当たり戦を行い、上位2チームが決勝ラウンドに進出。6チームずつ2グループに分かれて1試合決着で競い、各グループの首位同士が決勝戦を戦う。
決勝ラウンドに進めなかった12チームは同様の形式で補足ラウンドと呼ばれるトーナメントを行い、その勝者が2022年度のコパ・スダメリカーナ出場権を懸けて決勝戦の敗者と対戦することになっている。
ここで特筆すべきは、開幕日の10月30日にヒムナシアの監督を務めるディエゴ・マラドーナが還暦を迎えることだろう。
公式声明こそ出されていないものの、開幕戦がヒムナシアvsパトロナートになったのはLPFの粋な計らいだ。国内のメディアは一斉に「マラドーナの60歳の誕生日にサッカーが帰って来る」と報じた。
Photo: Getty Images
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。