新型コロナウイルス感染症による6カ月間もの中断期間を終え、9月15日からコパ・リベルタドーレスが再開した。南米諸国間で厳しい渡航制限が敷かれる中、南米サッカー連盟が徹底した衛生ガイドラインを作成し、各国政府から特別許可を得た上で開催可能となったが、フラメンゴで集団感染が発生したことから論争が巻き起こっている。
陽性者出るも試合は強行
昨年の覇者フラメンゴは再開後の初戦となったインデペンディエンテ・デル・バジェ戦のため9月15日にエクアドルの首都キトに到着。17日に0-5と大敗した後、22日のバルセロナSC戦に向けてそのままエクアドル国内に滞在し、グアヤキルに移動したが、20日に行われたPCR検査でキャプテンのジエゴやフェリペ・ルイスといった主力選手を含む計6人から陽性反応が検出され、翌21日にはさらに3人が陽性と診断された。
南米サッカー連盟が定めたガイドラインに従い、完全に隔離されていたはずだったチームの中で集団感染が起きてしまったことで、慌てたのは受け入れ側のグアヤキル当局。
シンティア・ビテリ市長が現状確認のためフラメンゴの滞在先に調査団を送ると同時に、試合会場のエスタディオ・モヌメンタルを閉鎖すると発表した。南米サッカー連盟にも状況の説明を求め、一時はバルセロナSC対フラメンゴ戦の開催が危ぶまれた。
ところがその後、エクアドル政府保健省のフアン・カルロス・セバージョス大臣が「試合開催を不可能にする衛生上の理由は存在しない」との声明を出し、ビテリ市長も「スタジアムは閉鎖されていない」と報告。
状況が180度変わったことについて、ブラジルのメディア『UOLエスポルチ』のマルセル・リッゾ記者は「南米サッカー連盟が予定通り試合を開催するようにエクアドル政府に圧力をかけた」と報じたが、真相のほどは定かではない。
試合実施後、さらに陽性者が
ここで疑問の声を上げたのが、エクアドル1部リーグを運営するリーガ・プロのミゲル・アンヘル・ロール会長だ。試合が開催される運びとなり、ツイッターで次のように不服を唱えた。
「エクアドルは各クラブの健康と大会の継続性を守るために努力してきたが、それが影響を受けている。なぜ我われの国でこのようなことが起きてしまったのか? ガイドラインとやらは一体どうなっているのか? 今日(の試合)の安全は保証されているのか? 南米サッカー連盟よ、我われの危惧を理解してくれ!」
だが、問題はここで終わらなかった。バルセロナ戦に2-1と勝利を収めて帰国した後、フラメンゴの一行からさらに3人の陽性が発覚したのだ。しかも、そこにはバルセロナ戦で90分間フル出場したロドリゴ・カイオも含まれていたため、エクアドルのメディアやファンの間では再び論議が噴出している。
再開後のコパ・リベルタドーレスではフラメンゴの他、ラシン対ナシオナル、カラカス対リベルタ戦のジャッジを担当する予定だった2組のブラジル人審判団から新型コロナ陽性反応が検出され、南米サッカー連盟が試合の前に急きょ他の審判と交代させるケースも起きている。
Photo: Getty Images
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。