9月15日から再開するコパ・リベルタドーレスに向けて合宿を行っていたボカ・ジュニオールのチーム内で、新型コロナウイルスのクラスター(集団感染)が起きてしまった。
隔離状態の中で陽性者発生
再開後の初戦となるリベルタ(パラグアイ)との試合を17日に控え、ボカでは8月24日からチーム一行が外部との接触を一切断つ隔離状態の合宿、通称「バブル」に入ったが、その数日後から、一部の選手たちが新型コロナと思われる症状を訴え始めた。
即刻メンバー全員にPCR検査を行ったところ、18名の選手と4名のスタッフから陽性反応を検出。クラブ側は感染した選手の名前を明らかにしていないが、アルゼンチン国内のメディアが報じた内容によると、その中にはレギュラー選手の多くが含まれていたとされている。
何度もPCR検査を行い、バブルに入る全員が陰性であるはずの状態でクラスターが発生したことは、国内でも大きな反響を呼んだ。様々な情報から各メディアが原因解明を行ったが、いずれも憶測に過ぎず、どのようにして感染が広がったのか、明確な理由は明らかにされていない。
その後チーム内では検査を繰り返し、回復した選手たちが個別トレーニングを始めているが、17日のリベルタ戦、続く24日のインデペンディエンテ・メデジン(コロンビア)との試合(ともにアウェイゲーム)に向けて、フィジカル面での準備不足を懸念するメディア関係者は少なくない。
各地で感染が拡大中
ボカでクラスターが発生する前には、同様にコパ・リベルタドーレスに向けてバブル状態で合宿を行っているリーベルプレートでもGKコーチに陽性反応が確認され、即刻隔離されるという事態が起きていた。幸いそれ以上感染は広がらず、以後チーム内で行われている検査では全員陰性という結果が出ている。
一方、ボカのような規模には至らずとも、8月初旬に練習が再開されてから各クラブで新型コロナの感染例が確認されるケースが立て続けに起きていることも事実。9月25日からリーグ戦再開を見込んでいたアルゼンチンサッカー協会も、再検討せざるを得ない状況に置かれている。
3月20日から強制隔離措置が続くアルゼンチンでは、一部の商業活動が徐々に解禁されると同時に各地で感染が拡大し、8月末には総感染者数が世界10位に浮上。9月8日現在、総感染者数が50万人、死者数は1万人を超えている。
地方ではアルゼンチン政府がこれまで最も恐れていた医療崩壊も起きており、ニューウェルスやロサリオ・セントラルといった名門の本拠地であるサンタフェ州ロサリオ市では、市内のICUの病床使用率が80%に至り、PCR検査数の50%から陽性反応が検出される事態にある。
3月3日に国内最初の感染例が確認されて以来、感染の勢いが最も盛んになっている今、今月のコパ・リベルタドーレスのみならず、来月スタートするW杯予選の試合開催への影響も懸念されている。
Photo: Javier Garcia Martino/Photogamma
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。