昨季RBライプツィヒを率いて1年目のシーズンを送った自身の仕事に対して「3+(及第点と良の間)」という成績をつけたユリアン・ナーゲルスマン。リーグ3位、UEFAチャンピオンズリーグ準決勝進出という成績には満足しているものの、「恒常的な発展を試みる」指揮官にとっては「あらゆる領域で成長のポテンシャルが残されている。我われ全員が野心的であるから、この『3+』はちょうど合っている」と話す。
8月26日の『シュポルトビルト』では、昨季および今季の課題について話している。過密日程が続く新シーズン、仕事は難しくなると見ているようだ。
昨季、RBライプツィヒが犯したミス
CLではパリ・サンジェルマンに0-3の完敗を喫したものの、ブンデスリーガで不完全燃焼のまま敗れるほうが悔しいという。
戦力的に大きな差があったことを認めたナーゲルスマンは「決勝に進めると信じていたが、そのためにはすべてがうまくハマらなければならない。マッチプランがうまくいったとしても、おそらくPSGには勝てなかっただろう」と振り返る。
リーグ戦では、以前紹介したように、新型コロナウイルス感染拡大の中断期間に戦術などの理論的な面でチームに積極的に働きかけなかったことを挙げた。
選手たちの精神面を考慮し、「いつ再開されるかも正確にはわからなかった」ことで、どれだけの負荷をかけるべきか迷ったことを明かしている。
昨季のサプライズと今季の課題
CLで敗退し、3週間後にはドイツ杯でシーズン開幕を迎える2020-21シーズン。過密日程が重なるなか、RBライプツィヒの指揮官にとって気になるのは「メンタル面の負荷」のようだ。
新シーズンは過密日程のなか、しっかりと負荷の高いトレーニングができなくともチームを成長させることを目標の1つとするナーゲルスマンは、次のように説明する。
「10月、我われは毎週3日おきに試合がある。これはクラブにとっても、自分たちのように若いチームにとっても難しい仕事になる。フィジカル面よりも、メンタル面の負荷の調整が課題になるんだ」とし、多くの人々がこの点を忘れてしまうと指摘する。
多くの人々がこの点を忘れてしまっている、と指摘した後、「選手たちは3日おきに、最高レベルで全力のプレーをしなければならない」と、バイエルンのように3日おきにトップパフォーマンスを出せるリズムの修得が急務と見ている。
シーズン初戦は昨季の“右腕”と対戦
9月12日のドイツ杯、1回戦の相手はニュルンベルク。指揮官は昨季、ナーゲルスマンのアシスタントコーチとして活躍したロベルト・クラウスだ。
RBライプツィヒで2010年から10年間に渡って育成機関のコーチ、監督、そしてトップチームのアシスタントコーチを務め、RBライプツィヒを誰よりも良く知る1人だ。
昨季、入れ替え戦でどうにか2部残留を果たした古豪は、今季はディーター・ヘッキングをマネージャーに迎え、クラウス監督を招聘するなど野心的な刷新を図っている。
RBライプツィヒは、自身の手の内を知り尽くす難敵とのアウェイゲームで、新シーズンの開幕を迎える。
Photo: Getty Images
Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。