8月4日にアルゼンチン政府がプロサッカー活動の許可を下したことにより、1部リーグの24クラブおよびコパ・リベルタドーレスに参加中のティグレは8月第2週から、5カ月間もの休止期間を経てトレーニングを再開した。
一転して練習再開を許可
サッカー活動再開についてはこれまで、政府から色良い返事がまったくなく、アルゼンチン全土における新型コロナウイルス感染の収束が条件とされていただけに、関係者の間では「年内再開は無理なのでは」との考えもあった。
だが、南米サッカー連盟がコパ・リベルタドーレスの再開を9月15日に決定したため、同大会に参加している5チーム(ボカ・ジュニオール、リーベルプレート、ラシン、デフェンサ・イ・フスティシア、ティグレ)からの懇願が聞き入れられたことになる。
アルゼンチン国内の感染状況は、冬に入ってから収まるどころか悪化していた。100万人あたりの死亡率も、3カ月前は7人だったのが、現在は110人を超えている。それでも感染防止ガイドラインを守りながら活動を再開させるためのプランがAFA(アルゼンチンサッカー協会)から提案されたが、政府が聞く耳を持たない状態が続いていた。
それがここに来てコロナの感染状況にかかわらず一転したことから、有力紙『ラ・ナシオン』は「結局『健康第一』はきれいごとに過ぎなかった」という厳しい意見を綴ったコラムを掲載している。
また、一部の重鎮ジャーナリストたちは「南米サッカー連盟におけるAFAの権力が明らかに衰えた」と指摘している。
AFA関係者の間では、アルゼンチンのクラブが活動を再開するまでコパ・リベルタドーレスは再開されないという確信があり、正式に再開日の延期を求めていた。南米サッカー連盟が決断を下した後も、参加チームの関係者たちは「少なくとも1週間は延期されるだろう」と見込んでいたが、結局そのような要望は無視される形になった、という見解だ。
各クラブ実費でPCR検査
活動再開のためにAFAが各クラブに配布したコロナ検査キットについても疑問の声が出ている。AFAが無償で提供したのは抗体検査キットで、その時点での感染の有無を確認するPCR検査キットではなかったからだ。
そのため、多くのクラブが実費でPCR検査を実施しなければならなくなった。コストがかかるため検査の回数や対象者はクラブによって異なり、ボカのように週に1度検査を行うクラブもあれば、感染例の少ないコルドバ州に本拠地を置くタジェレスのように、休止期間中に他州に滞在していた選手とスタッフだけを検査の対象としているクラブもある(※コパ・リベルタドーレスに参加している5チームにはPCR検査が義務付けられている)。
その結果、トータルで30名に陽性反応が出ており、どのクラブもガイドラインに従って各ケースに対応しているところだ。
このまま抗体検査だけでリーグ戦を再開することになるのかどうかはまだわからないが、AFAはその前にリーグ戦再開の日そのものを決めなければならない。
コパ・リベルタドーレスの日程に合わせて強行策に出た感が否めない中、選手たちがここからの1カ月で5カ月間のブランクを取り戻せるのかどうかが懸念されている。
Photo: Javier Garcia Martino/Photogamma
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。