累計感染者数は世界最多の約465万人、死者も15万人を超え、今なお新型コロナウイルス流行の大打撃を受けているアメリカ。
サッカー界も例外ではなく、2月29に開幕したMLSの2020シーズンは、第5節を終えた時点で1カ月間にわたって中断された。その後、中断期間の延長が繰り返され、現在まで再開のめどは立っていない。
1カ月間の大会を集中開催
MLS機構側は6月10日、中断されたシーズンの代わりに「MLS is backトーナメント」という短期間の大会を開催することを発表した。
MLSの26チームを1カ所に集め、グループステージとノックアウトステージを開催する大会形式で、期間は7月8日から8月11日までの約1カ月間。開催地はフロリダ州オーランドの「ESPNワイド・ワールド・オブ・スポーツ・コンプレックス」という複合スポーツ施設だ。
そして、この施設での大会開催を誰よりも喜んでいる男がいる。サンノゼ・アースクエイクスを率いるマティアス・アルメイダ監督だ。
「ESPNワイド・ワールド・オブ・スポーツ・コンプレックス」は、かつて「ディズニー・ワイド・ワールド・オブ・スポーツ・コンプレックス」と呼ばれていた。
その名の通りオーランドにあるウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート(WDW)の一角にあり、2010年にディズニー傘下のスポーツメディア『ESPN』にリブランディングされて現在の名前になった。
いずれにしても大会はWDW内で行われており、26チームの選手たちは施設内にあるリゾートホテル「ウォルト・ディズニー・ワールド・スワン・アンド・ドルフィン」を借り切って滞在している。
「子供の頃は夢にも思わなかった」
アルゼンチン出身で現役時代はラツィオやインテルで活躍し、2018年に就任したアルメイダ監督は、記者会見で次のように語っている。
「ここでの日々を満喫している。WDWに来るなんて、子供の頃には夢にも思っていなかった。今、ここで自分の仕事に従事していることが信じられない。通常時はポジティブなエネルギーが満ちあふれ、大人も子供も笑顔を絶やさない場所だからね」
いくらアメリカに滞在していても、通常のシーズンを送っていればWDWに行く機会など皆無だっただろう。それが思わぬ形で実現し、サッカーができる喜びとも相まって上記の発言になったようだ。
「コロナ禍は我々に大きな不安を抱かせた。多くの方が亡くなり、経済的な問題が噴出し、生活に困窮する方も続出している。だから満足してばかりはいられないし、神様と大会を組織してくれたMLS機構に感謝しながら日々を過ごしたい」
コロナの影響を受けた方々を思いやることも忘れなかったアルメイダ監督。アースクエイクスはグループステージを2勝1分で首位通過し、ラウンド16でもレアル・ソルトレークに5-2と快勝して準々決勝に進んでいる。指揮官は本職でも充実の日々を送っているようだ。
Photo: Getty Images
Profile
池田 敏明
長野県生まれ、埼玉県育ち。大学院でインカ帝国史を研究し、博士前期課程修了後に海外サッカー専門誌の編集者に。その後、独立してフリーランスのライター、エディター、スペイン語の翻訳家等として活動し、現在に至る。