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モノ言うフットボーラー本田圭佑、ブラジルメディアもサポーターも常に注目

2020.07.30

 7月26日に中高生年代を対象としたオンラインスクールの開校を発表し、話題となっている本田圭佑。現在、ボタフォゴでプレーする彼は、2月に到着して以降、ブラジルでも常に話題になり続けている。

教育問題に真剣に取り組む

 彼が取り組む教育問題についてもそうだ。クラブが運営する公式チャンネル『ボタフォゴTV』が、本田とチームメイトのマルセロの雑談をSNSにアップした時のこと。

 本田が「学校ってどうだった?」と聞くと、唐突な質問だったのか、マルセロはきょとんとしながら「まあまあ」と返答。本田が「学校で何を学んだ?」と重ねて聞くと、マルセロは「読み書きとか、2+2とか……」と答えながら、笑い出してしまった。

 その後、英語の分かる選手が本田のために英語でマルセロをからかい始めると、マルセロは「僕がポルトガル語で通訳するから、僕と話してよ、僕に話して」などと本田に絡む。

本田とマルセロ(左から2人目)のやり取りが『ボタフォゴTV』で話題に(Photo: Vitor Silva/Botafogo)

 当初はチームメイトとコミュニケーションを取ろうとする微笑ましい場面として紹介され、本田の親しみやすいキャラクターが話題になった。

 しかし、本田が自身のTwitter上で「Could you help me if I make online school for children in Brazil?(僕がブラジルで子供たちのためのオンラインスクールを作ったら、手伝ってくれますか?)」とツイートしたことが伝わると、その微笑ましい映像も、メディアが違った意味で取り上げるようになった。

オンラインスクールへのサポートを呼び掛ける本田のツイート

 『TVバンデイランチス・リオ』の『オス・ドノス・ダ・ボーラ』という番組のコメンテーターの1人、レオナルド・バランはこう話していた。

「もしパンデミックがなかったら、本田は今頃、すでに東京五輪出場のために帰国し、もうリオには戻って来なかったかもしれない。それが今、ブラジルの教育のために、何かしたいと考えている」

 「しかも、パンデミックのせいでブラジル全国選手権も始まっていないから、彼が全国各地を見たり、肌で感じたりする機会はなかったはず。リオの中でもほとんど出かけていないだろうに、情報を集めているんだよね」

 「それだけブラジルに関心を持ち始めているというのが、驚きでもあるし、ブラジル人としてはすごくうれしいよね」

レギュレーションに苦言で話題に

 もちろん、ピッチの中の話題もある。パンデミックによってサッカーが中断される前、本田が出場したのはデビュー戦となったリオ州選手権バングー戦のみ。その後、3カ月以上の中断を経て州選手権が再開され、3試合の公式戦を戦った。

 その再開の決定が性急だったため、1週間しか練習ができなかった上に、移籍や選手個々のコンディションのため、急造の布陣となった。そのチーム全体の状況を考慮した上ではあるが、中盤をコントロールし、チャンスを作る本田のプレーは、コメンテーターやジャーナリストから評価され、今後に期待されている。

再開初戦となったカボフリエンセ戦で本田は中盤をコントロールし、高評価を得た(Photos: Vitor Silva/Botafogo)

 一方、サポーターは賑やかだ。本田が中盤にいれば「パウロ・アウトゥオリ監督は本田をもっとゴールの近くで起用するべきだ!」と進言する。先日の親善試合では、本田が倒されて得たPKを別の選手が蹴って外してしまったため「PKは全部、本田に蹴って欲しい」「FKも本田が全部蹴ればいい」と、SNS上で要求する。とにかく本田のゴールが見たくて仕方がないのだ。

 また、ボタフォゴが州選手権後期リーグの準決勝で敗退した時のこと。その試合は引き分けだったのだが、この大会には「一発勝負の準決勝が90分で引き分けとなった場合、延長戦やPK戦は行われず、その前に行われたグループリーグの順位で勝者が決まる」という特殊なレギュレーションがあった。ボタフォゴはA組2位、対戦したフルミネンセはB組1位として準決勝進出していたため、そこで敗退が決まったのだ。

 本田がそのレギュレーションに疑問を投げかけるツイートをすると、そのツイートを拾い上げ、ブラジルの情報サイトが記事を掲載。その記事の読者のコメント欄には「本田はすっかりボタフォゴに馴染んだね。もう“泣き虫”になっているんだから」といったふうに「泣き虫」という言葉が並んだ。

フルミネンセの勝利を称えつつ、レギュレーションに疑問を投げかけた本田のツイート

 ただし、これは明らかにフラメンゴサポーターのコメントだ。この「泣き虫」は、12年前のある出来事から、フラメンゴがボタフォゴをからかう時に、いつも使う言葉。ボタフォゴサポーターだけでなく、ライバルチームのサポーターも、そうやって本田の発言に関心を寄せて読んでいる、ということの方がむしろ興味深い。

 8月8日には、延期されていたブラジル全国選手権がいよいよ開幕する。これまで以上に、本田のプレーについての話題も増えることだろう。

 新型コロナ感染拡大が止まらないブラジルでは、サポーターがスタンドを埋め尽くし……という日はまだ遠いかもしれないが、ボタフォゴサポーターは、本田がリオに到着した時と変わらない愛情を込めて「ホンダ!」「ホンジーニャ!」と叫びながら試合中継に熱狂するはずだ。

リオに到着した本田を熱烈に歓迎するサポーター。その熱量は今も変わらない(Photo: Kiyomi Fujiwara)


Photos: Kiyomi Fujiwara, Vitor Silva/Botafogo, Getty Images

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Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。

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