ジョルディ・クライフがエクアドル代表監督を辞めることになった。
エクアドルサッカー連盟が代表チームの新たな強化プロジェクトのプレゼンテーションと同時に、意気揚々とクライフを新監督として紹介したのが今年1月のこと。就任してからわずか半年後、試合はおろか、選手の招集リストを作成することも、練習を指揮することもないまま退任に至った予想外の展開は、国内外で反響を呼んでいる。
エクアドルに戻らずそのまま退任
現地時間7月22日現在、エクアドルサッカー連盟からの正式な発表はないが、通信社『EFE』が報じた内容によると、22日にクライフと同連盟の間で契約を解除することで合意に至ったとのことだ。
当初の予定では、クライフは7月16日にエクアドル入りすることになっていたが、国内のメディアによると、その前に同連盟のフランシスコ・エガス会長にクライフ本人から辞任の意を伝える連絡があり、「はっきりした返答ができるまでもう少し時間が欲しい」という理由でエクアドルには戻らなかったという。
この時点でクライフ退任説が国内で一気に広まり、サッカー連盟からの公式声明が待たれる中 (編注:現地時間23日に「辞任」が発表された) 、早くも後任候補の名前がいくつか挙げられる事態となっている。
退任に至った理由は明らかにされていないが、その背景にはエクアドルサッカー連盟の幹部間の争いが影響したと考えられている。
連盟内の派閥争いが影響か
同連盟ではクライフの代表監督就任後、その契約内容をめぐってエガス会長とハイメ・エストラーダ副会長の信頼関係が徐々に崩れたと考えられており、4月にはエストラーダ副会長を支持する6人の幹部がエガスを会長と認めず、エストラーダを会長に任命すると発表。時をほぼ同じくして、同連盟のスポーツディレクターで、クライフが信頼を寄せていた人物でもあるアントニオ・コルドンが組織内の派閥問題を見かねて辞任していた。
有力紙『エル・コメルシオ』のアレハンドロ・リバデネイラ記者は、クライフが辞任を決意した理由について、自身の連載コラムの中で「コルドンがいなくなり、一部の幹部が自分を口実に使って組織内で不安定な状況を引き起こしていた」ことを挙げており、幹部間の摩擦は以前から存在したが、一部の幹部がクライフとの契約内容を口実に打倒エガスを図った、との見方を明らかにしている。
クライフの代表監督就任に伴ってエンブレムも新しくなり、カタールW杯出場に向けて新たなスタートを切るはずだったエクアドル代表チーム。後任候補として、国内のメディアはアルゼンチン人のネストル・ゴロシート(ティグレ)やウルグアイ人のパブロ・レペット(リーガ・デ・キト)、ギジェルモ・アルマーダ(メキシコのサントス)などの名前を挙げているが、前述のリバデネイロ記者は「場当たり的な状況を避けるためにも、今は代表チームをクライフのアシスタントだったスタッフに任せるのが理にかなっている」とし、それよりも連盟内部にできてしまった亀裂を修復することが先だという考えを示している。
なお、クライフがバルセロナからオファーを受けた場合は契約を解除できるという条件になっていたことから、エクアドル代表監督を辞めてからバルセロナのコーチになるのではないかという憶測も飛び交っているが、スペインの『マルカ』紙は「バルセロナとクライフとの間にはいかなるコンタクトもなかった」と報じている。
Photo: Getty Images
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。