ロックダウン後のミランが好調だ。リーグ再開後、7月7日に行われた第31節ユベントス戦までの5戦で4勝1分は5連勝のアタランタに次いで2位。しかも、ユーベに加えてラツィオ、ローマとの上位対決をことごとく制してこの成績を誇っているところが注目に値する。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によれば、リーグ再開後の5戦でミランが受けた枠内シュートは11本とリーグ最少。コンディションの良さは、この数字からも明らかだ。
選手の自主性重視が奏功
その秘訣は、ステファノ・ピオーリ監督の指導方針の下でロックダウン中の調整に成功したことにあるという。ロベルト・ペレスッティとマッテオ・オスティの両フィジカルコーチは7月11日付の同紙の取材で「監督の方針により、ビデオを通したリモートトレーニングなどを選手にあえて強制しなかったことのおかげだ」と証言した。
ロックダウン期間中は屋外でのトレーニングが禁止されており、ご存知の通りサッカー選手も例外ではなかった。当然、一同に集めてトレーニングを実施するのはもちろん不可能だ。
しかしピオーリ監督は、ウェブカムなどのリモートを多用しないようにしたという。選手には週の頭にコーチングスタッフからトレーニング内容が通達される。そしてその間、選手の自主性を重んじて、付きっきりで管理することは避けた。
もちろん練習メニューは選手個人に合ったものが渡されていた。庭やバルコニーの有無など、使えるスペースはそれぞれの住居によって異なる。そこを考慮し、全体練習開始時にはコンディションにばらつきがあることも十分考えた上で、個人の調整を重視した。
「我われは個人トレーニングを通して選手のコンディションを均等化し、全員が同じコンディションでいられるように調整することができた。というわけで逆説的ではあるが、他のクラブもやりたかったことを、より短時間で達成することができたのではないかと思う」。ペレスッティコーチはそう語っていた。
好成績でも監督交代は不可避?
しかし、ピオーリが愚直にチームを立て直す傍ら、もっぱら来シーズンのラルフ・ラングニックの監督兼SD就任が噂となっている。
ズラタン・イブラヒモビッチが「ラングニック? 誰だか知らない」という台詞をイタリアの地元紙に対して発言し、ドイツのサッカー関係者を苛立たせる中、イタリア人指揮官は11日にナポリ戦の前日記者会見の中でこう語った。
「重要なのはリーグ戦が終了した時に最終的な総括をどうするか。クラブが意思を固めたのかどうかは分からないが、私が心配することではない。私と選手たちの心配は、良いことができるかどうかだ。我われはロックダウンの間だけではなく(自分が就任した2019年)10月から一生懸命働いてきた」
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。