ラ・リーガ第31節のマジョルカ対レアル・マドリー戦で、マジョルカのルカ・ロメロがラ・リーガ最年少デビュー記録を更新した。わずか15歳219日でのトップデビューに、世間は「神童だ」「ネクスト・メッシだ」と色めき立っているが、独自の視点で警鐘を鳴らす人間がいる。現在ベティスに所属するメキシコ代表のウインガー、ディエゴ・ライネスだ。
16歳9カ月でデビュー
ライネスは名門クラブ・アメリカのアカデミー出身で、2017年3月に16歳9カ月という若さでリーガMXデビューを飾った。リーガMXには現在、「Regla 20/11」という、20歳11カ月未満の選手を合計1000分以上プレーさせなければならない規則がある。各クラブはこのルールを順守するため、アカデミー所属の選手をたびたびトップチームに招集し、試合に出場させている。
このルールが目指すのは当然、若手の育成だ。若いうちにトップチームでの試合経験を積ませ、世界に伍する選手を育てよう、という思惑がある。
16歳でデビューし、18歳でベティスと契約したライネスは間違いなく成功例の1つだし、他にもアンドレス・グアルダードやハビエル・エルナンデス、ディエゴ・レジェスといった代表の主力たちがこのルールの恩恵を受けて早期デビューを飾り、大きく成長を遂げている。
だが、当のライネスは「メキシコには才能豊かなタレントがひしめいていて、幸運なことにその多くが日の目を見ている」としつつ「子供がトップチームデビューできることには怖さがある」とも語っている。
相当なプレッシャーがあるだろうし、屈強な大人とのマッチアップはフィジカル的にも難しさが伴う。16歳でのトップデビューという経験は、彼にとっていい思い出ばかりではなかったのかもしれない。
最年少は15歳7カ月
ルカ・ロメロのデビューとほぼ同じタイミングで、メキシコのスポーツメディア『mediotiempo』が「リーガMXにおける最年少デビュー記録上位10傑」という特集記事を公開していたので、その10人を紹介しよう。
1位 ビクトル・マニョン(パチューカ/15歳7カ月2日)
2位 マルティン・ガルバン(クルス・アスル/15歳8カ月25日)
3位 エミリアーノ・ガルシア(プエブラ/15歳11カ月27日)
4位 エベル・グスマン(モレリア/16歳2カ月0日)
5位 エドゥアルド・レルヒス(ベラクルス/16歳5カ月9日)
6位 フリオ・ゴメス(パチューカ/16歳5カ月9日)
7位 イアン・トーレス(アトラス/16歳7カ月7日)
7位 セサル・イバニェス(アトラス)16歳7カ月7日)
9位 ホセ・グアダルーペ・ガルサ(モレリア/16歳7カ月29日)
9位 ステベン・アルメイダ(パチューカ/16歳7カ月29日)
上位3人は15歳代で、その他の7人も16歳代。16歳9カ月でデビューしたライネスですらトップ10に入らない状況だ。
なお、メキシコでは2011年から2部リーグが若手育成のためのリーグに変更されることに伴い、「Regla 20/11」のルールは今シーズン限りで消滅する。才能豊かなティーンエイジャーの出現はワクワクするものだが、度が過ぎるのは考えもの、という部分もあるかもしれない。
Photo: Getty Images
Profile
池田 敏明
長野県生まれ、埼玉県育ち。大学院でインカ帝国史を研究し、博士前期課程修了後に海外サッカー専門誌の編集者に。その後、独立してフリーランスのライター、エディター、スペイン語の翻訳家等として活動し、現在に至る。