リーガの6月11日再開に向けて、いろいろと詳細が確定してきた。
選手たちの“声”を聞きたい
まず、以前お伝えした「スタンドの空席をどうするか」という問題については、バーチャルな観客を入れてバーチャルな歓声を挿入する「バーチャルバージョン」と、ボールを叩く音が空っぽのスタジアムに反響する「リアルバージョン」を視聴者が選べるようにする、というやり方で決定した。
これはスペイン国内で視聴する場合で、日本でも選べるのかどうかはわからないが、もし選べるなら『footballista』の読者にお勧めしたいのがリアルバージョンだ。
というのも、グラウンド上で誰がどのくらい指示を出しているのかがわかり、キャプテンシーやリーダーシップをチェックできるからだ。
例えば、私ならメッシのキャプテンシーを「聞いて」みたい。彼がプレー上のリーダーであることに疑いはないが、キャプテンシーについては疑問符が付いたまま。いったい試合中、どのくらい声を出しているのか。集音マイクの性能によっては、指示内容もわかるかもしれない。
あとは監督の怒鳴り具合。監督は怒鳴って修正するのが仕事で、一発で伝わるかなり強い言葉で怒りを表現し、チームを締めているはずだ。罵声も聞こえるだろう。そういう「政治的に正しくない部分」もぜひ知ってほしいと思う。
観客は入れず、メディアも制限
また、「観客を入れるかどうか」という問題については、公平を期すためにとりあえずの無観客開催が決まった。だが、ラ・リーガのハビエル・テバス会長が一部の地域であっても観客を入れることに賛成の立場なので、7月から観客を入れて開催する可能性も残っている。
その場合、無観客が続くと踏んでBチームのスタジアムでホームゲームを開催することにしたレアル・マドリーの反発は必至で、まだ二転三転するかもしれない。
また、メディア取材については、放映権を持つテレビ局とクラブメディア以外でスタジアムに入れるのは、テレビ局4社、ラジオ局6社、カメラマン14人、記者6人に決まった。
いずれもアウェイ側のメディアは入れず、全国ネットか開催地の地元のメディアだけ。会見はリモートで、試合終了後10分以内にスタジアムを出るなどの制限がある。
というわけで、ここ10年間皆勤だった11日のセビージャ対ベティスのダービーは、私は取材できないことになった。海外メディアの特派員が入り込む隙はほぼないからだ。
住まわせてもらっている身なので、スペイン優先はかまわない。一刻も早い正常化を望むばかりだ。ただ、これまでクラブ単位だった取材許可をラ・リーガが一括する今回のやり方が「悪しき前例」となって、近年着々と進んでいるクラブ側のメディア統制が加速しないか、と危惧を抱いている。
Photo: Getty Images
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。