ドイツを皮切りに欧州の国々がリーグ戦再開に向けて動き出す中、これから冬を迎える南米諸国の多くはまだ活動再開のめどが立っていない。
自宅トレーニングが5カ月続く?
アルゼンチンではすでに観光スポーツ省のマティアス・ラメンス大臣(前サン・ロレンソ会長)がメディアで「リーグ戦の再開は早くても9月。今はサッカーよりも人々の健康を守ることが最優先だ」と話しており、一部で報じられたグループでの練習開始案についても、保健省からはまだ色よい返事が得られていない。
強制隔離措置が続く中、選手たちは3月20日から2カ月以上にわたって自宅でのトレーニングを続けており、リーグ戦が実際に9月まで再開されなければ、少なくとも5カ月間は現状が続くことになる。
そのため、関係者の間では選手たちのコンディション低下と、それによる筋肉系の負傷を懸念する声も少なくない。
新シーズン開幕前には入念な準備が必要となるが、1部リーグに属するクラブの約6割を要するブエノスアイレス州で現在、感染者が急増していることから、春先(ブエノスアイレスは9月から11月が春)のキャンプ開始までにスポーツ再開に向けて万全な状態に戻れるかどうかは定かではない。
北部でキャンプ&リーグ戦開催の案も
そこで出てきたのが、新型コロナウイルス感染者がゼロとなった地区でキャンプを行うという案だ。
提案したのはアルゼンチンの最北に位置するフフイ州のヘラルド・モラレス知事。
フフイ州では3月17日に最初の感染者が確認されてから、これまでに計5人の感染例が見付かっているが、全員が海外からの帰国者で、州内感染はゼロ。5月23日の時点ですでに50日間以上新たな感染例がなく、22日からは州民限定で観光業を再開させている。
モラレス知事はラメンス大臣やAFA(アルゼンチンサッカー協会)のクラウディオ・タピア会長を始め、一部のクラブ役員とも個別にコンタクトを取り、同州でのキャンプ実施計画について報告した。
州内には4クラブを受け入れるキャパシティがあるとし、「プロトコルを作成して正式に提案する。フフイ周辺の州とも連携して、1部リーグの全クラブが安心してキャンプを行うことができる態勢を整えたい」と語っている。
例年のように海外キャンプをすることも不可能な今、感染症対策が整った州で時間をかけて準備できることは、衛生的にも経済的にも名案だ、との見方が多い。
また一部のメディアでは、フフイ州を含む北部でリーグ戦そのものを開催する可能性についても報じられており、ラメンス大臣も「開催地を北部に移すことは決しておかしなアイデアではない」と話している。
いずれにせよ、活動再開まではもうしばらく時間がかかりそうだ。
Photos: Javier García Martino /Photogamma, Getty Images
TAG
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。