「セリエAは99%の確率で6月13日から再開する」
5月14日、イタリアオリンピック協会(CONI)のジョバンニ・マラゴ会長は、イタリア国営放送『RAI』のインタビューに応答。「再開のためにすべての手を尽くしている」とセリエAが再開の方向に向けて検討を進めていることを明言した。
再開後は中3日の強行日程に
レガ・セリエAは13日にビデオ会議方式で代表者会議を行い、リーグ戦の開始を6月13日として政府側に提案することを決定した。
地元紙各紙によれば日程案も定まり、欧州サッカー協会(UEFA)が終了のデッドラインとしている8月2日までにシーズンを終了させることを目標に、中3日のペースで試合が実施されていく。
その中には、延期が決まっていたコッパ・イタリア準決勝2試合や決勝も組み込まれる模様で、政府の承認を得て正式に決定される。
また、チームの練習も5月18日からの解禁が決まった。各地元紙によれば、スポーツ省のビンチェンツォ・スパダフォーラ大臣は国会の中で「イタリアサッカー協会から、保健専門者から提示したガイドラインに正式承認が出たとの報告を受けた。18日から他の支障なく練習が開始される」と発言した。
各クラブもイタリア国外に出ていた選手を呼び戻し、それぞれ国の法令に則って14日間の隔離期間を設けて練習解禁に備えている。
新型コロナウイルス感染症の拡大から中断を余儀なくされたセリエAにようやく光が見えてきた……と思いきや、ことは単純にはいかないようだ。保健当局者から承認を受けたガイドラインについて、今度はクラブが逆に反対の意思を表明したのだ。
ガイドラインにはクラブ側から不安の声も
『コリエレ・デッロ・スポルト』によれば、14日に行われたレガ・セリエAの代表者会議で、インテルのジュセッペ・マロッタCEOが「ガイドラインに訂正してもらわなければならないところがある」と提案。ナポリも同調し、他のクラブも疑念を明らかにしたという。彼らが問題としているのは以下の通り。
1 開幕までは合宿が課され、外界と隔絶する環境の整備が義務付けられているが、選手1人に1部屋をあてがう施設の確保にはホテルを借り上げなければ難しい
2 感染者が1人でも出た場合はクラブの活動がすべて停止になるという、法令下における現在の規則は厳しすぎる
3 各クラブのドクターにあてがわれた責任と罰則があまりにも重い。合宿が課せられなければ状況は改善する
4 PCR検査キットの数を確保できるのか
こうした提案は、いち早く再開へと漕ぎ着けたドイツの例と対比してなされたものだったという。
合宿日程の長さについてはイタリアサッカー選手協会(AIC)からも「1カ月は長すぎる」という懸念が示されているが、彼らの要望を聞く意思が政府側にあるのかどうかは不透明だ。
スパダフォーラ大臣は国会の中で「サッカーはスーパーマーケットの店員とは違い、マスクや手袋もしていなければソーシャルディスタンスも開けていない」と苦言を呈し、ドイツにならって感染選手1人だけを隔離する方策は受け入れない意思をサッカー界に示している。
マラゴ会長も「再開してもリーグが終了するかどうかを知るには水晶玉がいる」と発言しているが、果たして無事の再開や終了は可能なのだろうか。障壁は多い。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。