前回も触れたように、ラルフ・ラングニックにはミラン行きの噂があるものの、本人は「RBライプツィヒでチームを作り上げたし、この街に住んでいる。ライプツィヒという都市にも、クラブにも強い感情的な結び付きがある。他の計画について考えるなら、本当にたくさんのことが重ならなければならない」と話している。
ここまで大きくなったプロジェクトを手放すには、あまりにももったいない。それとも、ミランのようなビッグクラブすらもグループの一部となってしまうのか……?
成功のカギとなる2つの問い
ここで、ラングニックはクラブのプロジェクトを成功させるためのカギについて説明している。「自分の場合、想像力が不足することは基本的にない」と、ラングニックはビジョンの必要性を説明する。
「ホッフェンハイムやRBライプツィヒでは、道のりがどのように発展していくのか、かなり正確にイメージすることができた。最終的には、次の2点を理解できるかどうかにかかっている。『自分が率いることになるクラブに、グループ内の他のクラブが何を見出しているか』。そして『他のクラブは、自分たちが発展するためにどんな可能性を与えてくれるか』。この2つが理解できれば、最終的に自分自身も、それが可能であると認識できるようになる。傲慢にならないように付け加えると、それが実現可能かどうか判断するために検討する要素は、それほど多くはない」
“育成”と “ビジネス・エコシステム”の構築
RBライプツィヒを頂点に、欧州のRBザルツブルク、米国のニューヨーク・レッドブルズ、ブラジルのブラガンチーノと各大陸に拠点を置くRBグループ。
それぞれ共通するコンセプトの下でプレーし、欧州トップレベルで通用する選手にチャンスを与えながら売買する。この“育成”とグループ内外からの移籍金をグループ内で循環させる“ビジネス・エコシステム”を構築したことで、RBグループの持続的な成長も現実的になってきた。
ブンデスリーガ特有の「50+1ルール」(投資家や企業がクラブ保有権を独占しないよう、母体のクラブに過半数の議決権を与えるというルール)には懐疑的ながらも、DFLが提起した選手のサラリーキャップ制などのアイディアには一考の余地があると話すラングニック。
コロナ禍が過ぎ、サッカー界の経済規模が見通せるようになった時、このグループの選手、資金、そして指導者といった流通インフラの真価が発揮されるだろう。
Photo: Getty Images
Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。