3月半ばにサッカーが休止されてから7週間が過ぎ、アルゼンチンでは多くのクラブがますます財政的に苦しい状況にあるが、すべての原因が新型コロナウイルス禍にあるわけではない。
国全体が財政難を抱える中、今年に入ってから給与支払いが困難となった企業が増加。サッカー界もその例外ではなく、名門インデペンディエンテに至っては一部の選手たちがついにクラブを相手取って訴訟を始める段階に突入した。
昨年12月から給与の支払いが滞る
スポーツ紙『オレ』が5月4日に報じた内容によると、インデペンディエンテでは昨年12月から主力選手たちへの支払いが滞り始め、ルーカス・プシネリ監督も1月から給与を受け取っていないという。
4月分までの報酬が契約どおり支払われたのは金額の低い選手たちだけで、その他は最低でも4カ月間を超える未払い状態が続いており、滞納総額は1億9000万ペソ(約3億2300万円)にのぼるという。
インデペンディエンテでは、今年に入ってからクラブ役員の代表者が選手たちと個別に話し合い、報酬を分割で支払うことで一時的な了解を得ていたものの、定められた期日に約束の金額が納められないケースが続いた。
そこに今回のコロナ禍による収入減が重なって状況はより深刻となり、選手たちとクラブ幹部の関係も悪化の一途をたどっている。
「クラブは実現できない約束をしている」
主力選手の1人であるシルビオ・ロメロは4日、ラジオ番組の取材に応じ、インデペンディエンテに対して強い姿勢で支払いを請求する姿勢を明らかにした。
「残念ながら昨年12月から、厳密に言えばもっと前から引きずっている状況がこのような形になってしまった。今(コロナウイルス禍のため)はタイミングが悪いが、パンデミックが流行る前から、サッカーが休止になる前からずっと続いてきたことなんだ。我われ(選手たち)は選手組合対策を使って未払い分の請求をすることに決めた。請求するのはパンデミック前までの報酬だ」
ロメロによると、すでに選手12名がクラブに対して支払いを命じる文書を内容証明郵便で送付。それでも解決しなければ訴訟する形となる。まずは12名が動いたものの、残る6~7名も同じ立場にあることから、今後の状況次第で同様の措置を取るものと見られている。
インデペンディエンテ側は、4日に入金予定だったニコラス・フィガルの移籍金(1月にインテル・マイアミに移籍)の50%を選手への支払いに充てると説明しているが、ロメロは「それでも我われへの支払いには相当の時間がかかる。クラブ側は実現できない約束をしている」と話し、完全に信頼を失った状態にあることを明らかにした。
アルゼンチンの1部リーグに属するクラブの中では、インデペンディエンテの他にウラカンでも選手たちが訴訟の準備を進めていると報じられている。
Photo: Getty Images
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。