新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響で、いまだに再開のメドが立たないブンデスリーガ。2部のみならず、1部の複数のクラブも破産申請の手続きをしなければならない可能性があることが報じられている。
そのうちの1つは、強豪クラブのシャルケだ。内田篤人やラウール・ゴンサレスが過去に所属し、UEFAチャンピオンズリーグの舞台でも活躍し、ほんの2年前にはリーグ戦でバイエルンに次ぐ準優勝を果たしている。『キッカー』によれば、5月2日が“ロイヤルブルー”をチームカラーとするシャルケの運命の日となるようだ。
リーグ中断によって放映権料が未払いに
これまで、トップチームは給与の15%のカットに合意。ドイツ国内のメディアは、さらに15%の給与をカットし、合計で30%の給料カットになった、とも報道している。スタッフたちも「就労時間短縮」の処置が施され、実質の減給処置が取られた(今回のケースでは、スタッフたちの減額分はおそらく労働局によって一部補填される)。
本来なら4月10日にDFL(ドイツサッカーリーグ機構)から、年4回に分けて支払われるテレビ放映権料の4回目の支払いが行われるはずだった。だが、現在までこのおよそ1600万ユーロ(約19億円)の支払いは滞っている。クラブとリーグ機構は5月2日の支払いで合意したとされており、シャルケにとってはこの日がクラブの存続がかかった運命の日となった。
窮状を訴えるシャルケの役員たち
シャルケの役員の1人であり、経営の責任者であるペーター・ペータースはフェイスブックのクラブ公式アカウントで現状を説明した。
「法的機関が提案した税金の支払いの延期など、できることはしている。出費は極力減らし、スタッフたちは『就労時間短縮』の措置が取られ、選手たちとも給与カットで合意をした。だが、すべては再びサッカーができるようになり、収入が入ってくるかどうかにかかっている。中断期間が長引けば長引くほど、より痛みが伴う大きな措置を取らざるを得なくなる」
さらに、販売部門の役員であるアレクサンダー・ヨ-プストは4月8日、VIPラウンジの保持者に対して、試合が行われていない4試合分の払い戻しをしないことを受け入れてほしい、と懇願するEメールを送っている。「我々はこれから、クラブの存続がかかった状況に直面しようとしている。そのため、スポンサー料やホスピタリティ料がこれまでにないほど必要になっている」と切迫感が伝わる内容だ。
もはやロマンは追えない…トップチームの「企業化」も現実的に
新型コロナウイルスによる経済的な不況の影響を受け、来夏の移籍市場もそれほど活発ではなくなる見通しだ。選手を放出することで資金を補填する道は期待できない。現在はクレメンス・テニース会長を通じて融資を受け、どうにか資金をやり繰りするのが現実的な生存方法になりそうだ。
これまで、シャルケは「非営利のクラブ」として登録される“e.V.(eingetragener Verein、登録クラブ)“にこだわってきた。この数年間はトップチームを非営利クラブから切り離し、企業化させて営利追求を容認することも検討されてきたが、ファンたちの反対によって実現することはなかった。
バイエルンやシュツットガルト、ボルフスブルクは「株式会社」を意味する“AG(Aktion Gesellschaft)”だ。ドルトムントも「株式合資会社」を指す“KGaA(Kommanditgesellschaft auf Aktien)という形態を取っており、外部から出資者を入れられる体制を取っている。
『キッカー』はシャルケの経済的な状況から見て、今後も現在の地位を維持するためには、トップチームを企業化させるしかないと見ている。シャルケの会員総会は6月に行われる予定だ。ファン、支援者、経営陣を含むすべての関係者には、重要な決断が迫られている。
Photo: Getty Images
Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。