新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって3月中旬からすべての大会を中断しているCONMEBOL(南米サッカー連盟)は、4月7日に加盟10カ国の医師代表者たちとビデオ会議を行い、プロからアマチュアまで全カテゴリーにおけるサッカーの活動再開に向けたプロトコル(規約に基づく手順)作成に取り掛かった。
医師の助言をもとにプロコトル作成へ
会議にはCONMEBOLのアレハンドロ・ドミンゲス会長を始め、同連盟の開発部長を務めるゴンサロ・ベジョーソ氏の他、各国のサッカー協会またはサッカー連盟の医師団代表者20名が参加した。
ドミンゲス会長は話し合いを始めるにあたり、「我々は組織および大会をより良いものにするために戦略を示し、将来を考えながら常に事前に、可能性に基づいて物事を進めていきたいと考えている。サッカー界の一部をなすすべての人たちをCOVID-19から守るため、助言をもとに一緒にプロトコルを作成することが今回の招集の目的だ」とコメントした。
プロトコルはクラブチームと代表チームの両方を対象としており、トレーニングから試合の順で活動を再開するための具体的なプログラムが作られることになっている。
行動力を示し関係者に安心感を
各国でまだ外出禁止や自粛が守られ、アルゼンチンのように感染のピークを5月後半と想定している国もある中で、CONMEBOLがサッカーの再開に向けた準備を進めているのは決して早まった動きではない。ドミンゲス会長の「事前に物事を進めたい」という言葉にもあるように、CONMEBOLは今回のウイルス対策においても、後手に回らないために早めの対策を講じている。
「欧州におけるアウトブレイクの脅威が間もなく南米にも及ぶ」という専門医たちの警告を真摯に受け止め、2月25日にブラジルで南米初となる感染が確認された直後からUEFA(欧州サッカー連盟)と密に連絡を取り合い、各国政府の方針を重視する姿勢を明らかにしながら、3月12日にはコパ・リベルタドーレスとコパ・スダメリカーナを中断。17日にはコパ・アメリカを1年延期する決断を下している。
また、ドミンゲス会長は医師団との会議を前に、リベルタドーレス及びスダメリカーナ再開の条件として「全加盟国が感染の危険から解放されていること」を挙げている他、両大会のグループステージに参加する全クラブに参加報酬の60%を前払いすること、各国のサッカー界の財政難をサポートするために2700万ドル(約29億円)の救済基金を設けることを発表した。
2年連続で異なる理由から直前にリベルタドーレス決勝の会場変更を余儀なくされてもたつき、計画性と判断力の欠如を指摘された汚名を一気に拭い去るほどの行動力を示すことで、現時点では南米諸国のサッカー関係者を安心させることに成功している。
なお、活動再開に向けたプロトコルは会議から数日以内に仕上がる見込みだ。
Photo: Getty Images
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。