新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に揺れるイタリアで、無観客試合で続行となっていたセリエAが4月3日まで中断となった。
3月10日に発表されたイタリア共和国の首相令に、感染防止対策の1つとして「スポーツ競技の中断」が盛り込まれ、同日に行われた伊サッカー連盟(FIGC)の臨時役員会でも正式に中断が承認された。
無観客開催から一転、中止に
様々な紆余曲折を得て、4月3日までのセリエAの試合は無観客で開催されることにいったんは決定していた。ところが3月7日、感染者の拡大を憂慮したイタリアのジュセッペ・コンテ首相が移動制限区域を拡大する声明を発表すると、イタリアサッカー選手協会(AIC)のダミアーノ・トンマージ会長が「リーグ戦を中断しよう。それ以外あるか?」と中断を訴えた。
これを受け、スポーツ相のビンチェンツォ・スパダフォーラ大臣がFIGCや伊オリンピック協会(CONI)に強く働きかけ、結果としてサッカーを含むすべてのスポーツ競技を中断するという運びになった。
一方で感染者はさらに増え、コンテ首相は3月9日に全国に渡っての移動制限や集会の禁止を課した追加法令の発表を宣言。その中で「残念ながらサッカーのリーグ戦の実行も認めるわけにはいかない」と、中断があらためて明言された。
EURO2020開幕遅延の打診も
UEFAチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグなどの国際試合、イタリア代表などの国際親善試合は無観客での開催が可能となり、練習も禁止とはならない。ただ、AICは「練習もストップさせろ」と訴えている。
いずれにせよ、感染者の増加に歯止めが効かず、その中心となっているロンバルディア州では商店の大幅な営業停止や公共交通機関の停止さえ検討されている状況では、もうリーグ戦の中断は不可避な状況だったのかもしれない。
一方で、問題は4月3日以降に再開した後のこと。中断期間中は2節分20試合が消化できないことになるが、6月からEURO2020が開催されるため、5月31日までに国内サッカーの日程を終了しなければならず、代替日の工面は困難になる。つまり、日程の消化ができなくなれば、リーグ戦が成立せずタイトルも無効になってしまうリスクが生じるのだ。
3月10日の臨時役員会では優勝やCL出場権争いのプレーオフに降格のプレーアウトなどを行うという提案もなされたが、結局結論は出ず、23日に再度、話し会いが行われることになった。
『コリエレ・デッラ・セーラ』によれば、FIGCのガブリエレ・グラビーナ会長は欧州サッカー連盟(UEFA)の関係者と連絡を取り、1週間から10日ほどEURO2020の開幕を遅らせられないか、という打診を始めているという。感染は欧州他国にも飛び火する中、サッカー界の混乱は続く。
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。