新型コロナウイルスがスペインサッカーに影響を及ぼし始めた。
前回の記事(2月28日執筆)から6日間が過ぎようとしている段階(3月5日執筆)で、感染者は25人から237人に急増。ちなみに3月4日の増加幅は41人で、これは日本の同日の数字36人増(NHK調べ)を上回っている。
感染増を食い止められていない現状だが、スペイン政府は、“水際作戦”(外国からの侵入を防ぐ)の「フェイズ1」を維持。生徒や教師に感染者が出た小中高校ですら、休校措置を取らず平常通りの授業を続けている。これは感染者の90%が外国での感染であり、国内発の爆発的流行は起こっていない、という政府の認識ゆえなのだが、それが正しいかどうかはここ1、2週間で明らかになるだろう。
通常開催されるCL、ELの試合も
そんな中、UEFAチャンピオンズリーグのバレンシアvsアタランタ(3月10日)、UEFAヨーロッパリーグのヘタフェvsインテル(3月19日)の無観客での開催が決まった。
これは政府の“アドバイス”(フェイズ1では強制力のある措置は採れない)によるもので、当初バレンシアは「クラブの年会員だけを入れて試合をしたい」と反対したものの、結局は政府提案を受け入れることになった。転売での購入を目当てにチケットを持たないイタリアのファンが大挙押し寄せる可能性を否定できないからだ。
その一方で、同じイタリア勢を迎えるCLバルセロナvsナポリ(3月18日)、ELセビージャvsローマ(3月12日)は、無観客試合にはなっていない。というのも、両チームの本拠地ナポリとローマが、スペイン政府の「感染危険地域」(イタリアでは北部のみ)とされていないからだ。
だが、ナポリファン=ナポリ在住者、ローマファン=ローマ在住者とは限らないし、セリエAが全試合の無観客での開催を決めているのに、スペインではナポリファンもローマファンも自由にスタジアムで観戦できる、というのは理屈に合わない、という議論は当然出て来るだろう。
3月3日、セビージャは公式ツイッターを通じてセビージャvsローマの通常開催を広報したものの、用心深く「今のところは」と前置きしている(予想されたことだが、3月19日のローマvsセビージャは無観客開催が決定済み)。報道によれば、ローマからセビージャに要求されたアウェイファン用チケットは2200枚。売れ行きにもよるが、2000人程度のローマファンがセビージャを訪れると予想されている。
観光が主な産業である地元の商業施設にとっては朗報だが、「本当に大丈夫か?」という不安の声も上がっている。
Photo: Getty Images
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。