森岡亮太、三好康児、伊東純也らも出場。複雑なベルギーリーグプレーオフ
ベルギー1部リーグ、ジュピラー・プロ・リーグのレギュラーシーズンが3月16日で終了する。3月末からはプレーオフが始まり、5月中旬までの約2カ月間、リーグ優勝、各欧州カップ出場権、残留を懸けて戦う。他国のリーグのファンにはとっつきにくいプレーオフシステムと現状を解説する。
1部&2部から3つのプレーオフへ
レギュラーシーズンは7月から翌年3月まで行われ、ジュピラー・プロ・リーグ(1部)は30節、プロキシマス・リーグ(2部)は28節を戦う。1部の首位クラブには来シーズンのUEFAヨーロッパリーグ(以下EL)の予選3回戦への出場権が与えられる。
1部の1位から6位に入ったクラブは「プレーオフ1(PO1)」、1部の残り10チームと2部の1位から6位のクラブは「プレーオフ2(PO2)」、2部の7位、8位は「プレーオフ3(PO3)」にそれぞれ振り分けられる。
PO1は上位同士の白熱した試合で人気
PO1は、6チームで総当たり10試合を行い、レギュラーシーズンの勝ち点を半分にしたポイントが各チームに与えられた状態でスタートする。小数点以下は切り上げになるが、プレーオフ終了時点で勝ち点が並んだ場合、レギュラーシーズンの勝ち点が繰り上げられていないクラブが上位となる。
1位には来シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(以下CL)のグループステージ、2位にはCL予選3回戦への出場権が与えられる。3位はPO2勝者とEL予選2回戦出場を巡る「ELプレーオフ」を行う。レギュラーシーズンで欧州カップ戦出場権を獲得したクラブ、またはベルギーカップを制してELグループリーグ出場権を手にしたクラブがPO1の3位以上に進出した場合は4位のクラブにEL予選2回戦への出場権が与えられ、すでにEL出場権を持つクラブが2つ、3位以内に入った場合は、5位のクラブにEL予選2回戦への出場権が与えられる。
半分の勝ち点からスタートするプレーオフのシステムは、何度も議論の対象となっている。しかし、上位同士のハイレベルな試合や逆転優勝の可能性もあるレギュレーションによって観客数や視聴率が向上しており、中規模のクラブにとってはPO1進出が大きな目標となっている。このプレーオフシステムの成功を受けて似たようなレギュレーションを採用する国も欧州で増えており、現在ではウクライナ、ルーマニア、ポーランドなど数多くのリーグで採用されている。
現在はクルブ・ブルッヘが首位を確定しており、ヘント、森岡亮太所属のシャルルロワ、スタンダール・リエージュ、三好康児所属のロイヤル・アントワープがPO1に進出している。ベルギーカップ決勝にクルブ・ブルッヘとアントワープが進出しているため、欧州カップ戦出場権はPO1に進出したクラブが獲得する可能性が高い。
レギュラーシーズン2試合を残した現在は、伊東純也所属で昨シーズン優勝のヘンク、プレーオフ導入後はPO1進出を続けているアンデルレヒト、初のPO1進出を目指すメヘレンに可能性が残されており、最終節ではメヘレンとヘンクの直接対決が予定されている。6位メヘレンとの勝ち点差が3ポイントある名門アンデルレヒトは、PO1出場を逃す可能性が非常に高いのが現状だ。近年、資金が増加しているアントワープ、シャルルロワなどの台頭により、PO1争いも年々、激化している。
頻繁にレギュレーション変更。試行錯誤が続くPO2
EL予選2回戦出場権を巡って戦うPO2は今シーズンからレギュレーションが変更。1部、2部合わせて12チームから16チームに変更となった。レギュラーシーズンの順位によってA〜Dまでの4グループに4チームずつ振り分けられ、総当たり6試合を行う。それぞれのグループで首位になった4チームがホーム&アウェイ方式でトーナメントを戦い、最後まで勝ち残ったクラブが「ELプレーオフ」に進出し、PO1の3位のクラブのホームでEL予選2回戦出場を懸けて戦う。
毎年多くの観客が集まり、盛り上がりを見せるPO1と異なり、PO2はやはり盛り上がりに欠けるのが実情だ。勝者にEL出場権は与えられるが、クラブごとのモチベーションには差があり、来シーズンに向けてのテストと捉えるクラブも多い。一方、2部のクラブにとっては貴重な力試しの機会となる。昨シーズン、アップセットを繰り返したユニオン・サン・ジロワズ(2部)のルカ・エルスネル監督は、フランスのリーグ・アン、アミアンの新監督へとステップアップしている。
鈴木優磨、伊藤達哉、シュミット・ダニエル、松原后が所属するシントトロイデンは、今シーズンは序盤から苦戦が続いてPO1進出ができず、PO2に挑む。昨シーズン達成できなかったグループリーグ突破を果たし、EL出場権を獲得したいところだ。
過酷なマッチレースに挑むロケレン
最後はPO3。今シーズンからレギュレーションが変更となり、2部の下位2クラブが2部残留を懸けて直接対決を行う。ホーム&アウェイ方式で最大5試合を行い、順位が確定した段階で勝者が残留、敗者がアマチュア1部リーグ(3部)降格となる。レギュラーシーズン7位には勝ち点3のアドバンテージが与えられ、ホームゲームも1試合多い。
下位2チームの直接対決を繰り返す方式のプレーオフは、2009-10シーズンから1部で採用され、7シーズン行われた。15-16シーズンを最後に廃止されたが、今シーズンから2部で復活となった。
今シーズンはルーセラーレとロケレンが対戦する。天野純、小池龍太が所属するロケレンは、昨シーズンは1部最下位で23年ぶりに2部に降格。1年での復帰を目指したが、序盤から不調が続き、レギュラーシーズンはまさかの最下位で終了となった。クラブの深刻な財政難が報じられる中、ルーセラーレと生き残りを懸けて最大5試合の直接対決に挑む。
Photo: Getty Images
Profile
シェフケンゴ
ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。