1月13日、エクアドルサッカー連盟は、ジョルディ・クライフが同国の代表監督に就任することを正式に発表した。多くの注目を集めたクライフ監督誕生だが、実は紆余曲折の果てに実現したものだった。
クリンスマンと一度は口頭合意も……
2019年のコパ・アメリカ後、成績不振によりエルナン・ダリオ・ゴメス監督が退任。そこからクライフが就任するまでの約半年間、U-20及びU-23代表を率いるホルへ・セリコがA代表の暫定監督を兼任してきた。
後任がなかなか決まらない中、2019年10月初旬にはエクアドルサッカー連盟のフランシスコ・エガス会長が代表監督の最有力候補としてユルゲン・クリンスマンの名前を挙げ、「すでに交渉が進み、口頭では合意に至っている」と公言。エクアドル国内では一斉に「近日中にもクリンスマンが代表新監督として発表される」と報じられ、海外のスポーツメディアでも話題になっていた。
ところがその後、クリンスマンはヘルタ・ベルリンの監督に就任。連盟のハイメ・エストラーダ副会長はクリンスマンと合意に至らなかった理由について「10月にエクアドル全土で起きた暴動が原因で、様々な条件の折り合いがつかなかった」とし、「セリコ暫定監督を正式に任命することも視野に入れている」とコメントした。
セリコ監督自身も「A代表を指揮するコンディションにある」と意欲的な姿勢を示していたが、12月中旬、クライフがそれまで監督を務めていた中国の重慶斯威を辞めた直後からエクアドルメディアが同氏を「代表監督の最有力候補」と報道。噂が出回り始めてからおよそ1カ月後に就任確定となった。
経験不足のクライフを不安視する声も
エクアドルサッカー連盟は、クライフ監督就任のお披露目に大勢のメディアやサッカー関係者を招待した大々的なプレゼンテーションを行い、「結果に捉われない育成からの長期的、総合的な強化」を基盤とした新たなプロジェクトについて説明すると同時に、同組織及び代表チームの新エンブレムを発表。
クライフ新監督も、自身がこの代表チーム再建プロジェクトの一端を担うことについて「やる気に満ちているし、私とスタッフを信頼してくれた連盟に心から感謝している」と述べた。
南米サッカー及び代表チームでの指導歴が全くないクライフが代表監督に任命されたことについて、国内では疑問の声も少なくない。今年は3月からワールドカップ予選が始まり、6月にはコパ・アメリカも控えているが、クライフ監督が限られた時間の中で低迷する代表チームをどのように築き上げるかが注目されている。
Photo: Getty Images
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。