新型コロナウィルス(COVID-19)の伝染が急拡大しているイタリアで、ついに欧州のプロサッカー選手として初の感染者が出てしまった。
風邪の症状で試合を欠場し……
感染者となったのは、トスカーナ州シエナ近郊のピアンカスタニャイオをホームとする、セリエC(3部)ピアネーゼに所属する選手。この選手は2月23日にアレッサンドリアで行われたユベントスU-23戦のメンバーとして招集されていたが、前泊のホテルで風邪の症状を訴えて試合を欠場。試合後、チームとは別行動で自宅に戻ったという。
そして数日の自宅療養の末、2月26日の朝に検査を願い出たところ、当日夜に新型コロナウィルスの陽性反応が出た。ピアネーゼはただちに練習を中止。全選手、監督やスタッフら30名に自宅謹慎措置を取らせると発表した。
トスカーナ州は伝染地とはされていない。しかし当該の選手は感染者が多数出ているエミリア・ロマーニャ州の出身で、ユーベU-23戦の数日前に電車で帰省していたという。『ユーロスポーツ』によれば、熱も下がって健康上はすでに回復。現在はシエナ市内の病院に経過観察入院中だ。
また、クラブの公式発表によると、入院中の選手以外に発熱やせき、下痢などの症状を訴えた者は誰もいないという。感染した選手が在住していたシエナ郊外の街でも、特に封鎖などは行われない模様だ。
ユベントスは敏感に反応
一方、この件に敏感に反応にしたのは当然ながらユベントスだ。現在のところU-23チームに所属する選手の中で体の変調を訴える者は誰もいないが、クラブは保護措置をとった。ファビオ・ペッキア監督率いるユーベU-23はトップチームが使用するコンティナッサのユベントス・トレーニングセンターで時々練習していたが、数日間は下部組織が使うビノーボのトレーニングセンターのみで練習を積むこととなった。もっとも、頻繁に合同練習を行っているわけではなく、UEFAチャンピオンズリーグのユベントスvsリヨン戦でも、トップチームに招集されたU-23の選手はいなかった。
現在のところ複数の感染者が出ているわけではないが、選手の中から出たということが衝撃的な事態であることを物語る。セリエCを統括・運営するレーガプロのフランチェスコ・ギレッリ会長は2月27日、「健康が一番大事である」と強調した上で「新しいことが判明したら、当局の通達に沿った上で適切な態勢をとっていきたい」と語った。
なお、セリエCでは2節ぶん35試合の延期がすでに判明しているが、セリエAと違って無観客試合は行わず、すべて順延させるという。
現在ハンガリー1部のブダペスト・ホンベードで指揮を執っている元シエナ、パレルモのジュセッペ・サンニーノ監督も、制限区域出身の友人とコンタクトを取ったということでクラブに願い出て自主的に隔離措置を取った(自身は病気などにはかかっていない)。世界をパニックに陥れている新型コロナウイルスショックに、イタリアのサッカー界も本格的に巻き込まれてきた。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。