4万5782名――。アタランタは2月19日に行われたUEFAチャンピオンズリーグのラウンド16バレンシア戦の第1レグで、クラブの歴代最多入場者数を更新した。
サン・シーロまで70kmの大移動
これまでの最多記録は、1984年9月16日に行われたアタランタvsインテル戦の入場者数4万3426名。もっとも、これはスタジアムの安全基準が現在のように厳しくなく、立ち見席などもあった時代の数字である。
アタランタは本来のホームスタジアムであるアトレーティ・ダッズーリ・ディタリアがUEFA主催試合の開催基準を満たさず、現在3カ年計画で改装中ということもあり、CLについては70kmほど離れたミラノのサン・シーロを借りての開催となっていた。
試合当日は、ベルガモ市の人口12万人の3分の1に相当する数の観客がミラノまで訪れたことになる。サポーターズクラブの移動などを取りまとめる団体「アミーチ・デッアタランタ」によると、27台もの観光バスがチャーターされたという。
ベルガモ市のジョルジョ・ゴーリ市長は、自身のインスタグラムにあるサポーターのメモ書きをアップ。「本日午後、(息子の)エドゥアルドは文化・歴史的な用事のため欠席をします。そして父親とともに、ベルガモの歴史の新しい1ページを見届けることになります。フォルツァ・アタランタ!」という父親が書いた欠席届と思われる文書を紹介し、街のムードを世に知らしめた。
声援に後押しされチームは快勝
試合当日、サン・シーロはメインスタンドとバックスタンドの2階席までを解放した。もちろん解放されたスペースはすべて埋まり、サポーターたちは愛するチームに熱い声援を送った。
なお、クラブ史上最多を更新したのは観客数だけでなく、入場料収入も然り。261万8651ユーロ の入場料収入は、グループステージ第4節のマンチェスター・シティ戦(179万6889ユーロ)を大幅に凌上回った。
そして試合は、アタランタが4-1で圧勝。ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督の下で作り上げたオールコートのマンマークプレスと素早い切り替えからのワイド攻撃がハマり、試合開始から66分までに4点ものリードを築いた。テクニカルな相手をプレスで追い回した反動からか後半は息切れを見せたものの、失点を1に抑えて勝利をもぎ取った。
試合後、記者会見場にガスペリーニ監督が姿を見せると、地元記者から拍手が沸き起こった。ガスペリーニ監督は「まだ早いよ」とやんわり制し、「我われは次の第2レグでベスト8進出を勝ち取らなければならない。まずはアウェイゴールを奪わなければならない」と表情を引き締めた。
なお、メスタージャで行われる第2レグの観戦ツアーはすでに募集が締め切られている。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』の報道によれば、2400席が割り当てられたアウェイサポーター席には、なんと1万人もの購入希望が寄せられたという。アタランタとベルガモの街の人々は、さらなる冒険を続けることができるのか。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。