2月10日、カリアリはプレスリリースを発表し、FWレオナルド・パボレッティが左膝前十字靭帯断裂の重傷を負ったと公表した。パボレッティは昨年8月に同箇所を故障しており、再建手術を受けていた。病院での検査の結果、同じ部分の故障が判明したことも併せて発表された。
復帰の間際に起こった悲劇
ヘディングの強さが特徴のパボレッティは、イタリア代表に招集された経験を持つチームの攻撃の柱だ。昨年8月の故障のあと、12月中旬からボールを使った練習を始め、今年3月の復帰が見込まれていた。
その最中の悔しいアクシデント。パボレッティは自身のSNSで「運命は時に厳しい。やっと復帰が見えてきたところでまた離脱することになるなんて」と心境を吐露し、「笑顔を取り戻すのも言葉をひねり出すのも難しいが、これまで取り組んできたように頑張りたい」と苦しい境遇の中で前を向く意思を表明した。
再建手術を施されたあとに故障の再発が起こってしまうのは、靭帯の裂傷や断裂ではしばしば聞くエピソードである。だが、このニュースを報じたイタリアの衛星局『スカイ・イタリア』は「クラブはパボレッティに対し罰金を検討している」と耳を疑うような情報も流した。パボレッティの故障の再発は、どうもグラウンドやジムで起こったことではないというのだ。
“ただのアクシデント”ではない可能性も
地元紙『ウニオーネ・サルダ』はことの経緯を以下のように報じている。アクシデントが発生したのは2月6日夜、舞台はカリアリ市内のレストランだ。チームメイトともに食事をしていたパボレッティは「その外か中かは不明」としながらも地面に転びそうになり、「その際に不自然な足な動かし方をして痛めた」という。
そのまま車で家に帰ったものの、翌朝になっても痛みが引かなかったのでチームに連絡。クラブが報告を受けたのは、7日午前の遅い時間になってのことだったとしている。「クラブは何をしていたのか素行についても調査をし、場合によっては罰金を課すことも検討している」と報じた。
それでなぜ罰金という話になるのかは違和感の残るところだが、このニュースが流された時、地元ファンの間では「どうしてレストランで“転ぶ”なんて事態が発生するんだ?」という疑問の声も出た。
地元のネットメディアでは、「真偽不明の噂」としながら「レストランではロランド・マラン監督のシンパと反監督派に分かれて口論になり、反監督派にいるパボレッティが“有形力を行使”しようとした結果ケガをした」という情報まで流れている。
この件に関して、クラブは2月12日に声明を発表して「(状況の)再現を伝える記事がいくつか出ているが、すべて空想であり、コメントするにも値しない。我われは選手に起こったことに心を痛めている側にいる」と完全に否定。また、複数の選手もSNS上で否定のコメントを出した。
ともかく、期待していたエースストライカーの復帰が遠のいたのは痛い。序盤好調だったカリアリは息切れが見え、第23節終了時点で8位まで転落。クラブにとってはその最中のバッドニュースとなってしまった。パボレッティには様々な選手、クラブから見舞いと励ましのメッセージが寄せられている。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。