ユベントスは1月2日、アタランタとMFデヤン・クルゼフスキの獲得について正式合意したと発表した。契約期間は2024年6月30日まで。ただしすぐには加入せず、2020年6月までは現在レンタルでプレーしているパルマに引き続きレンタルで所属することとなった。
移籍金3500万ユーロで妥結
現在大ブレイク中の19歳のスウェーデン人は、マケドニアにルーツを持つ。同国のサッカー界で最も優秀な育成組織を有することで評価の高いブロマポイカルナで育てられた。最初はDFだったが、中盤にポジションを上げられると攻撃能力が開花し急成長。2016年夏、練習試合に挑んでいた際にアタランタ下部組織の強化主任が彼を発見し、アーセナルとの争奪戦に勝って獲得に成功した。
その後も順調に成長し、ユースで頭角を表すと、2019年1月にはセリエAデビューを果たした。もっとも複数の地元紙によれば、ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督はアレハンドロ・ゴメスのバックアッパーとしてはまだ不適格と評価し、それを感じ取ったクルゼフスキがレンタル移籍を希望したという。
そして今シーズン、経験を積ませるためにパルマへレンタル移籍させたところ大ブレイク。リーグ戦で4ゴール7アシストと攻撃の中核として機能。突破させてもよし、組み立てに参加させてもよし、ゴール前にも飛び出し、ラストパスも正確ならミドルシュートでの得点力も確かという逸材だ。
その逸材には国内外から高い注目が集まり、ユーベのファビオ・パラーティチSDが試合の重ならなかった日に視察に来たことも話題となっていた。そして1月2日、交渉は妥結。アタランタには5年間の分割で合計3500万ユーロが支払われ、価値の上昇に伴い最大900万ユーロが増額される。
さらに、現在レンタル中のパルマに今シーズン終了までレンタルが継続されることも決定した。同クラブのダニエレ・ファッジャーノSDは「我われもクルゼフスキもこのまま最後までシーズンを終わらせたかった。彼の残留が最大の補強だ」と喜んだ。
連帯貢献金の初適用例に
さて、この移籍にはもう一つ重要な点がある。イタリアサッカー連盟(FIGC)は2020年1月から選手の移籍に関して育成クラブに対する連帯貢献金を設定することになったが、クルゼフスキの移籍が初の適用例となったのだ。国際サッカー連盟が選手の国際間移籍の際に設定した制度にならったもので、当該選手が12歳以上で所属していたクラブに分配されることになる。
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によれば、今回の場合は100万ユーロが連帯貢献金にあてがわれる。内訳はアタランタ50万ユーロ、パルマに10万ユーロが支払われ、残りの40万ユーロはFIGCが受け取って他の事業に用いるという。
ただし分配に対し、選手がこの間に所属していなかった場合や外国人選手として国内にいなかった時期についてはFIGCが分配を決めるということになっているため、難色を示したクラブも多かったようだ。
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。