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ヘンクの選手が誤認逮捕される。「反差別の原則」は守られているか

2019.09.16

ヘンクのDRコンゴ代表FWが「誤認逮捕」

 KRCヘンクのコンゴ民主共和国代表FWディウメルシ・エンドンガラは9月10日、自身のフェイスブックライブで、ブリュッセル近郊のビルボールデの子供服店『H&M』で窃盗の疑いで逮捕された件について説明をした。

 現在28歳のエンドンガラは、ルクセンブルクのジュネス・エシュでプロキャリアを始め、ベルギーリーグのシャルルロワ、ヘント、スタンダール・リエージュなどを渡り歩き、2018年1月にヘンクへと加入。俊足を武器とする右サイドのチャンスメーカーで、ヘンクでは伊東純也とポジションを争っている実力者だ。

 子供のためにビルボールデの店へ訪れたエンドンガラは、商品の支払いを済ませて、店を出ようとしたところで2人の警察に呼び止められ、逮捕された。ショップの女性店員が、床に衣服のラベルが散らばっていたのを見て「三編みの筋肉質のアフリカ系男性が窃盗した」と警察へ通報したため、ヘンクのウイングプレーヤーが疑われたのだ。

「反差別」はスタジアム外でも守られなければいけない

 エンドンガラは、「店員はラベルが散らばっているところだけを見て私を疑った。証拠なしに、ただ黒人がいることで通報したH&Mの店員を非難する」と抗議した。持参していたバッグの中身を開けられ、何も盗んでいないと証明されたエンドンガラは、購入した商品を返品した。エンドンガラは有色人種への偏見だと非難している。

 『H&M』のスポークスマンのマリアーヌ・ネリンクス氏は、地元紙『ガゼット・ファン・アントウェルペン』の取材に対し、「ビルボールデでは多くの盗難事件が起きている。警察には何か疑わしいことがあったら連絡するように言われている。エンドンガラ氏が疑わしい行為をしたと言われたので、すぐに警察に連絡した」と主張。さらに「H&Mは様々な人種や宗教の人々が就業しており、多様性を推進している。私たちにとっても人種差別はとんでもない話だ」と応えている。

 誤認逮捕についてベルギープロリーグ連盟のピエール・フランソワCEOは「ディウメルシ(・エンドンガラ)が偏見によって事件に巻き込まれるのは受け入れることができない。ベルギーリーグが取り組んでいる『反差別と多様性の原則』はスタジアムの中だけでなく、外でも守らなければいけない。我われは選手たちへ全面的なサポートを表明する」とH&Mストアを強く抗議した。

 また所属するヘンクの公式Twitterアカウントでは「1チームに15国籍の選手が集まり、そこには差別は存在しない。エンドンガラを全面的にサポートする」と15の国旗を並べたツイートを残している。

Photo: Getty Images

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ヘンク文化

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シェフケンゴ

ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。

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