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バレンシア、突然の監督交代劇。その裏にはやっぱりお家騒動が

2019.09.14

マルセリーノ電撃解任、背景にはやっぱり……

 11日午後、バレンシアの監督マルセリーノが電撃解任された。2年前に就任し、2季連続でCL出場権を獲得して昨季はコパ・デルレイの優勝監督に。その指揮官が「いきなり」である。しかも、カンプノウでのバルセロナ戦の3日前、来週にはCLのチェルシー戦がある、というタイミングで、だ。

 チームの不振が理由ではないことは明らかだ。今季は開幕から3試合で1勝1分1敗、放り出されるような成績ではない。この程度で解任なら、最下位になった昨季前半戦は10回くらい解任されていなければおかしい。あの時よく我慢して、やっと手に入れたかに見えたクラブの安定をまたもや放り出してしまった。

 では、何が理由か?

 ここに書いたロドリゴ移籍騒動で頂点を極めた、ピーター・リム、オーナー側と現場のマルセリーノ+マテウ・アルマニーGMの対立の結末としての解任である。オーナー側とマルセリーノ側には、今夏の補強をめぐり以下のような対立点があった。

①ロドリゴ放出賛成=オーナー、反対=マルセリーノ
②ラフィーニャかデニス・スアレス獲得賛成=マルセリーノ、反対=オーナー
③ファルカオ獲得賛成=オーナー、反対=マルセリーノ

 以上のオペレーションはいずれも成立せず、双方に不満が溜まっていた。オーナーには私財を投入して財政破たんを救ったバレンシアは自分のものだ、という自負がある。通常、社員がオーナーに楯突いても勝ち目はないが、サッカーでは重要な、スポーツ的な実績とGMと選手たちとファンの支持という後ろ盾がマルセリーノを何とかベンチに留まらせていた。だが結局は、オーナーはマルセリーノのクビを切れるが、その逆はない……。

マルセリーノのクビを一方的に切ったオーナーのピーター・リム

選手たちはマルセリーノ擁護

 選手の反応は予想されたものだった。

 キャプテンのパレホは「あなたがどこへ行っても、介入さえなければ成功できると確認している」。「介入さえなければ」のひと言が誰かへの批判であることは明らか。ラシン時代からの恩師を失ったガライの言葉はさらに過激だった。

「この決断をした者はあなたを踏みにじっただけでなく、チーム全体とファンを踏みにじった。はっきり大声で言う。『不当だ』と」

新監督に任命されたセラーデス。1部リーグ監督経験はないが……

 再びカオスの到来である。

 新監督のアルベルト・セラーデスは選手時代、イバン・デ・ラ・ペニャとともにクライフの申し子とされたMFだった。「マルセリーノのカウンターサッカーと合わないじゃないか!」なんて“高度な”議論はすまい。選手とファン、メディアの反発の中、アンダー代表監督としては実績があるが1部リーグで指揮するのは初めてというセラーデスの監督キャリアも、今回の決断は踏みにじってしまうかもしれない。

Photos: Getty Images

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バレンシアマルセリーノ・ガルシア・トラル

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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