残った者、新たにやってきた者。リーグ1のメルカート最終日まとめ
ネイマールは残り、イカルディがやってきた
リーグ1のメルカートが、9月2日をもって閉幕した。
今夏、メディアを騒がせたパリ・サンジェルマンのネイマールは、結局移籍交渉がまとまらずに残留が決定。本人はこの最終日を、ブラジル代表の合宿地であるアメリカ、マイアミで過ごしていた。
その頃、PSGが奔走していたのは別の案件で、インテル所属のアルゼンチン人FWマウロ・イカルディの買取りオプション付きレンタル移籍が、締め切り1時間前にまとまった。
イカルディはインテルでの6シーズンでセリエAの219試合に出場し、124ゴール、28アシスト。2017-18シーズンのベストアタッカーに選出され、そのシーズンと2014-15シーズンには、それぞれ29点、22点で得点王(同数タイ)にも輝いている。
インテルはこの夏、マンチェスター・ユナイテッドからロメル・ルカクを獲得した。6年を経て、この機会に新たな環境へと挑戦する気になったのだろう。
「参戦するすべてのコンペティションでできる限り上を目指すべく、PSGで全力を尽くすつもりだ」
イカルディはそう意気込みを語っている。
ちなみにイタリアメディアの報道では、報酬もグーンとアップして、推定年800万ユーロ+ボーナス200万ユーロ、しめて1000万ユーロ(約12億円)の大台に乗ったらしい。
PSGはこのほか、懸案だったGKのポジションに、レアル・マドリーからコスタリカ代表のケイロル・ナバスを獲得した。ナバスといえば準々決勝に到達した、2014年のワールドカップでのパフォーマンスが印象的だ。PSGは代わりに、アルフォンス・アレオラをレアルにレンタルに出した。ということで、今季、第1GKとしてPSGのゴールを守るのはナバス、ということになる。
リヨンはブラジル路線、モナコからはあの男が去る
リヨンは、ブラジルはフラメンゴから21歳のMFジャン・ルーカスと、リールから同じくブラジル人のMFチアゴ・メンデスを獲得した。
栄光の7連覇の立役者でありクラブのレジェンド、ジュニーニョ・ペルナンブカーノがテクニカル・ダイレクターとしてクラブに復帰、同胞のブラジル人監督シウビーニョを迎え、これまで以上にブラジル色が濃くなってきたリヨン。これまで数年間、エースとしてチームを支えてきたナビル・フェキルをレアル・ベティスに、将来フランス代表の中盤を担うと期待されるタンギ・エンドンベレもトッテナムに手放し、今季のリヨンは新章に突入した感じだ。
個人的には、“ファルカオ先輩”がモナコから去ったのは寂しい。
ラダメル・ファルカオの契約は、今年、最終年を迎えていたのだが、クラブと延長交渉がまとまらず、「この年になると、自分のキャリアだけを考えてはいられない。家族に安住できる環境を与えてやることも必要だ。そのためには次のステップも考えないと……」と本人も話していた。行き先はトルコのガラタサライ、長友佑都のチームメイトになる。
ファルカオは側から見ていても、本当に尊敬できる選手だった。
メディアへの対応もいつも誠実だし、クラブが厳しい状況にあるときにでも、常に真摯に取り組んで、若手の見本になるよう努めていた。
そんな彼だから、どこへ行ってもきっとみんなに愛されるだろう。
またモナコは、右SBジブリル・シディベもエバートンにレンタルに出した。これで2017年の優勝メンバーはGKスバシッチやDFグリクら、ほんの少数になってしまった。一方でMFティエムエ・バカヨコは、チェルシーから出戻ったが。
そしてマルセイユを引っ張ってきたブラジル人MFルイス・グスタボもトルコのフェネルバフチェへ。
グスタボは昨年の夏も移籍を嘆願していたのに、叶わなかった。そんな昨シーズンはやっぱり、パフォーマンスにも乗り切れないところがあったから、クラブ側も彼の意思を尊重しないわけにはいかなかった模様。一昨シーズンは、DFメンバーにけが人が相次ぐ中、中盤からセンターバックと、三十路の体が悲鳴をあげるまでフル回転していたから、あのシーズンで、マルセイユでは出し切った、という気持ちになったとしても不思議ではない。
リーグ1に帰ってきたコシェルニー
……と、離脱の話題ばかりが大きくなりがちなリーグ1だが、元フランス代表の闘魂あふれるセンターバック、ローラン・コシエルニーが母国リーグに復帰し、さっそくボルドーで気を吐いている。
第2節から3試合連続でフル出場、第4節のリヨン戦では、敵陣で価値あるドローをもぎとった。
その他、PSGから、やる気にあふれた20歳の若手DFスタンリー・エンソキを獲得したニースは、パトリック・ビエイラ監督の采配2年目でけっこう奮闘しそうな予感だ。「まずはディフェンスから」といった手堅いプレーで地道に勝ち点を取る彼らは、第4節では好調レンヌを敵陣で破っている。
そのレンヌに第2節で敗れたものの、すぐに首位を奪回したPSGが、新たなストライカー、イカルディを加えてさらにパワーアップするのか。マイアミから帰ったあとのネイマールのやる気具合も合わせて、まだまだPSGは話題を提供してくれそうな感じだ。
Photos : Getty Images
TAG
Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。