欧州デビューは驚きの右ウイング。菅原由勢、AZでの第一歩を踏み出す
菅原由勢、EL予備予選で欧州デビュー
菅原由勢(名古屋グランパス→AZ)の欧州デビューは7月25日、ヨーロッパリーグ(EL)予備予選2回戦、対ヘッケン(スウェーデン)だった。0-0で迎えた59分、DFスタイン・ワイテンスと代わってピッチに入った菅原は、大きな拍手を浴びながら右ウイングのポジションへと走っていった。
最初のプレーでいきなりボレーのクロスを入れてスタジアムを沸かせると、終了直前にはゴールライン際からスライディングしながらクロスを入れるも、惜しくも得点にはつながらず、0-0のまま試合は終わった。
滴り落ちる汗を拭いながら菅原は開口一番、心のこもった感謝の気持ちを素直に語った。
「まずは使ってくれた(アルネ・スロット)監督、今まで育ててくれた指導者の方、支えてくれた家族、今までお世話になった人たち……。すべての人にお礼を伝えたいと思います。まだまだここは通過点ですし、これからもっと長い道のりがあると思いますけれど、まずはスタート地点に立てたということに対する感謝の気持ちを、みんなに伝えたいと思います」
菅原と言えば17歳のときにセンターバックとしてJ1デビューを果たし、U-20ワールドカップでは日本代表の一員として右サイドバックで活躍したイメージが強い。「まさかウイングで出場するとは思ってませんでした」と菅原も振り返っていたが、それは想定内の驚きだったようだ。
「(プレシーズンで)僕はしっかり監督とコミュニケーションを取っていました。監督は『ウイングとして使うかもしれない』と言っていましたし、自分も『試合に出られるんだったら、僕はどこのポジションでも構わない』と言いました。今日の試合でもありましたが、僕の斜めの走り、相手の背後を突く走りを評価してもらえていると思うので、そこをもっと質を高めて結果につなげていきたいです」
「自分が入ったらというのは、常に考えていた」
AZの右サイドバックには、過去2シーズン、レギュラーとして活躍してきたヨナス・スベンソン(ノルウェー代表)という中心選手がいる。攻撃力に魅力のある選手だが、ポゼッション時には攻撃参加を控えめにして、中盤で中に絞ってコントローラーのような役目を果たしている。菅原が右サイドバックに入った場合、彼にもスベンソンと同じようなタスクが求められるのだろうか。
「7番の選手(右ウイングのカルビン・ステングス)は個の特徴があります。それを生かすためにもサイドバックがインサイドに入って、(ステングスに)仕掛けさせるというのが狙いだと思います。逆の左サイドバック(オーウェン・ワインダル)は高い位置を取って、仕掛けさせている。本当に個の特徴に合わせたスタイルのサッカーをやっていると思います。
もし、自分が入ったらというのは、常に考えていました。試合中に監督が言っていることを聞き、どういうところで指示を出しているのかを見て、『監督が僕に求めるのは何なのか』ということを考えながら45分間、監督の話を聞いてました。なおかつ、プレーも見ていたので、ピッチに入ってもそんなに難しさはなかった。あとは、自分の動きに対して敵がどう動いてくるのかというのを観察しました。比較的、考えながらやれたと思います」
AZに合流したとき、菅原はチームメートの前で「俺は優勝したい」と宣言したのだという。
「盛り上がっていました。『なに言ってんだ、こいつ』と思われたかもしれませんが、それぐらいデッカイ夢を持ってこっちに来ていますし、それぐらいの覚悟もあるということを伝えたかった」
今後、スロット監督が菅原のことを、どのように起用していくのかも含め、AZの今季が楽しみである。
Photo : Getty Images
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中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。