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CL予選でファンを魅了したPSV。勝ち負けを凌駕したエクスタシー

2019.07.26

ダイナミックなサッカーに酔いしれる

 オランダリーグ開幕まで、あと2週間。まだプレーシーズンと言えばプレシーズンだが、欧州カップ戦の予選はすでに始まっている。チームの最適解を探りながらの難しい時期。それでもPSVはバーゼル相手に3-2の大逆転勝利を収め、フィリップス・スタディオンはエクスタシーに達した。

 舞台はチャンピオンズリーグ予備予選2回戦、第1レグ。79分、バーゼルがコーナーキックからDFアルデレーテの豪快なヘッドで1-2とすると、PSVはサム・ラマースを投入してスクランブルをかけた。そのラマースが89分、渾身のヘッドで同点弾を叩き込むと、アディショナルタイムにはエリック・グティエレスのクロスから、ドンイェル・マーレンが鮮やかなヒールキックシュートを決めて3-2とした。

 もちろん、ホームで2失点を許してしまったのだから、バーゼルで行われる7月30日の第2レグに向けてPSVが苦しい立場であることに間違いない。早々にPSVがCL予選で去る可能性もあるだろう。だが、フィリップス・スタディオンを埋めた3万1000人の観衆は、PSVが披露したダイナミックなサッカーに酔い、顔を紅潮させながら家路に着いた。

縦に縦にと突き進むPSVのアタッカー陣

 我々が見たものは、スピード、アジリティー、テクニックにポジションチェンジを織り交ぜて相手MF、DFを翻弄し、縦に縦にと突き進むPSVのアタッカー陣だった。ストライカーのマーレン、トップ下のスティーブン・ベルフワイン、両ワイドのブルマ、イルビング・ロサーノは、いずれも爆発力に富んだ俊英だ。敵にとっては、PSVの攻撃陣は非常に捕まえづらい。この4人が繰り出すカウンターにファンは息を呑んだ。

 中でも、昨季まで主にサイドアタッカーとして活躍していたベルフワインは、トップ下として新境地を拓いたと言えるだろう。少し引き気味の位置でボールをキープし、軽々とマーカーを剥がしてからベルフワインが繰り出すスルーパスは、PSVの攻撃をさらにギアアップさせていた。

 昨季までRBライプツィヒでプレーしていたポルトガル人サイドアタッカー、ブルマはPSVにとって良い補強だった。3人がかりでマークを受けても、冷静かつテクニカルに局面を打開するプレーは見事なもの。戦術的規律も高く、試合中に[4-2-3-1]と[3-4-1-2]システムを切り替えるPSVにおいて、ウイングバックとしても機能していた。14分には見事に先制ゴールを決めている。

キャプテンは古巣復帰のアフェライ

 バーゼル戦ではベルフワイン、マーレンのスタメン組に加え、コーディ・ガクポ、ラマース(昨季はヘーレンフェーンで武者修行)といった途中出場組が活躍した。17歳のMFモハメド・イハッタレンもオランダで大いに期待されている。

 こうしたタレントがすくすくと伸びていくには、メンターを務めるベテランの力も必要だ。今季から古巣PSVに戻ってきたイブラヒム・アフェライは、まだコンディションが整ってないため、実戦復帰まで少し時間がかかりそうだが、バーゼル戦直前、マルク・ファン・ボメル監督は「今季のキャプテンはアフェライ。彼が試合に出てない時は、パブロ・ロサリオが腕章を巻く」と発表した。酸いも甘いも知った33歳のMFが、いかに復活し、どうチームに好影響を与えるかも今季の楽しみのひとつである。

 バーゼル戦に集まったPSVのファンは、カウンター、セットプレーに対する守備の拙さなどマイナス面も見たが、それ以上のプラス面を見た。それは単に3-2という目先の勝ち負けを凌駕するファンタジーだった。もしかすると、PSVは今季のCLに出場できないかもしれない。ロサーノ、ベルフワインは夏の移籍市場でPSVを去るかもしれない。それでも、1シーズンというスパンで見たとき、今季のPSVは高いポテンシャルを秘めたチームだと言えるだろう。


Photos: Getty Images

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PSVマルク・ファン・ボメル戦術

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中田 徹

メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。

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