期待の新戦力ロドリ、シティでデビュー
この夏、マンチェスター・シティがクラブ史上最高額となる6280万ポンド(約85億円)を支払ってアトレティコ・マドリーから獲得したスペイン代表MFロドリが、中国で開催されたプレミアリーグ・アジアトロフィーで新天地でのデビューを飾った。
ロドリは、日本での横浜F・マリノス戦に先立って行われたウェストハム戦(4-1)、ウォルバーハンプトン戦(0-0)のプレシーズンマッチ2試合に、[4-3-3]のアンカーとして先発出場。早速、自信にあふれた立ち振る舞いや質の高いパスさばき、クレバーかつアグレッシブな守備を見せた。クラブではフェルナンジーニョ、スペイン代表ではセルヒオ・ブスケッツの後継者と言われる23歳は、ペップ・グアルディオラのスタイルにも早期にフィットできるのでは、と思わせるパフォーマンスを披露し、サポーターの期待は膨らんでいる。
そんなロドリは、中国ツアー中に答えたインタビューの中で、こんなことを語っていた。
「僕のポジションでプレーするときには、何歳なのか、またはどれほどの選手なのかに関わらず、チームをリードしていかなきゃいけない。ピッチの中央にいるんだから、チームメートがどこにいるのかを把握しておかないと。僕はまだ若いけれど、このチームでもそういう役割を果たせると思っている。ダビド・シルバのような素晴らしい選手がいることはわかっているが、僕の役割はどんなシチュエーションでもチームをリードすることなんだ」
10代から勉強していた英語をすでに話せるというロドリは、早々にチームに馴染み、それどころか錚々たるメンバーの中でピッチ上のリーダー役を担うことが自分の使命と考えているようだ。偉大なる先導者、ディエゴ・シメオネ監督の下で学んできたリーダーシップをシティで発揮できるか、注目だ。
ボールを奪う術はタックルだけじゃない
また、前述のウェストハム戦やウルブズ戦で目を引いたのは、落ち着いたパスさばきだけでなく、彼の守備の仕方だった。ロドリは191cmと大柄だが、パワーに任せてボールを奪ったり、現役時代のシメオネのようにハードなチャージをぶちかましたりといった守りを売りにはしていない。ペップもロドリの恵まれた体格は「セットプレーで武器になる」とコメントしており、高さがないシティにあって貴重な存在になるとは認めつつも、「そのために獲得したわけではない」と念を押す。ボスが高く評価しているのは、「思考が早い典型的な守備的MF」であること。実際、判断力やタイミング、ポジショニング、体の使い方といったクレバーな要素を武器にボールを刈り取るプレーが持ち味だ。
「タックルには慣れていないんだ。僕にはボールを“盗む”別のやり方がある。他の選手が滑りながらタックルにいくのを見てきたが、僕はとても背が高いから、(タックルにいって)グラウンドに倒れたら、起き上がって再び走り出すのに人より無駄な時間を使ってしまうからね!」
そうしたことも考慮した上で、タックルよりもインターセプトやカバーリングのセンスを磨いてきたのも、クレバーな男らしい。イングランドは伝統的に“タックル信仰”が強いお国柄だが、別の方法でもしっかりとボールを奪い、戦う姿勢を示すことができれば、すぐに認めてもらえるはずだ。
「このチームで必要なのは、ボールを奪うためにプレッシャーをかけること。偉大な攻撃の選手が多くいるけれど、それほど守備的な選手はいないから、常に注意を払って、ルーズボールを拾って攻撃につなげる準備ができていないといけない」
プレミア連覇で一定の完成形が見えているペップ・シティに、これまでにいないタイプとして加わったロドリは、チームにとってどんなスパイスとなるのか。まずは7月27日、日産スタジアムでの横浜F・マリノス戦で、そのパフォーマンスをチェックしてみたい。
Photos: Getty Images
Profile
寺沢 薫
1984年生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、2006年からスポーツコメンテイター西岡明彦が代表を務めるスポーツメディア専門集団『フットメディア』に所属。編集、翻訳をメインに『スポーツナビ』や『footballista』『Number』など各媒体に寄稿するかたわら、『J SPORTS』のプレミアリーグ中継製作にも携わった。