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ジェラード監督が選手に求めるのはプレーの裏に隠された「グリット」

2019.07.12

現役時代から“準備”をしていたジェラード

 18-19シーズンから監督に就任し、グラスゴー・レンジャーズを率いているスティーブン・ジェラード。現役時代よりジェラール・ウリエ、ラファエル・ベニテスといった監督たちから学ぶところが多かったというリバプールのレジェンドは、選手時代から監督となる準備をしていた。「あの頃は、毎トレーニング後に、こっそりとメモをしていた」と『ソクラテス』のインタビューのなかで話している。

 「その日のトレーニングの中で、どんな点がとりわけ気に入ったのかをメモしていたんだ。それに加えて、ジェラールやラファが、監督という職業をどう理解し、振る舞っていたのか、私自身のそのときの印象もメモしていた。後々(自分が監督になって)そのメモが必要になることは、ずっと分かっていたんだ」

限られた予算、見るべきは“人格”

 レンジャーズのマネージャーとして、ジェラードは移籍情報サイト『Transfermarkt』の評価額ではわずか3765万ユーロ(約46億円)、選手1人あたり約135万ユーロ(約1億6500万円)と、欧州カップ戦を目指す上で比較的小規模な予算でやりくりすることが求められている。

 そういった状況に置かれたジェラードが、獲得選手を見極める際に、プレー面以外にも気をつけてチェックしている項目がある。それは、“人格”の部分だ。「サッカー選手としてのピッチ上の能力がひとつ、そして、その裏に隠された人格の部分を見ている」とジェラードは話す。「その選手に対して、どのように働きかければ良いのか? どのような教育を受け、どのように選手として訓練されてきたのか? 彼は闘える選手だろうか? 我々のクラブと心を寄せ合うことができるだろうか?」といった部分をフィルターにかけているのだ。

成功への飢えと自発性を備えたメンバー構成

 限られた予算のなかで、完璧に満足のいく補強を進めるのは難しいが、現在のメンバーにも手応えを感じている。

「チームのメンバーは、経験こそ比較的少ないが、信じられないほど成功に飢えている。私たちは、とりわけ、これまでの所属クラブで大きな活躍をできなかった選手たちを中心に獲得してきた。獲得に至った選手たちは、自身の能力を証明したい意志を備えていた」

 スコットランドの名門でプレーすることで、再び注目を集め、挽回を期す選手たちが集まっているのだ。そうして、ジェラードはまとめる。「私にとって、選手獲得の際に最も重要な点は、強い自発性を備えていることなんだ」。

「グリット」を重要視するジェラードらしさ

 ここでジェラードが説明しているのは、まさに近年成功の要因として注目を集める「グリット」という能力だ。このグリットとは、長期に渡って情熱を持ってひとつの物事に取り組み、途中で投げ出さずに最後まで成し遂げる能力のことを指す。

 名選手として長年に渡って名を馳せたジェラードだが、プレーだけではなく、プロ選手としての態度から世界中のファンを引きつけ、尊敬を集めてきた。長い間第一線で活躍し続けるには、才能だけでは足りないことを誰よりも良く知る彼らしい選手補強で、再び欧州の舞台を目指す。


Photos: Getty Images

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スティーブン・ジェラードリバプールレンジャーズ戦術移籍

Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。

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