ヘントのエースは19歳のカナダ代表
昨年6月、2026年ワールドカップの開催地がアメリカ・メキシコ・カナダの共同開催になることが決定した。アメリカでは1994年、メキシコでは1986年以来の開催になるが、カナダはW杯初開催となり、エドモントン、モントリオール、トロントの3都市で合10試合が開催される予定になっている。
北中米・カリブ海サッカー連盟の2大巨頭であるメキシコとアメリカ合衆国に比べ、カナダはW杯出場は1986年大会のみ(グループリーグ敗退)。国際タイトルも2000年のCONCACAFゴールドカップの優勝1度のみ。そのカナダに、地元開催のW杯のエースとして期待されるニュースターが誕生した。
その選手は、ジョナサン・デイビッド。18年6月に、ベルギーのヘントの下部組織から昇格したデイビッドは、デビュー戦となった第2節のズルテ・ワレヘム戦に途中出場。アディショナルタイムにチームを敗戦の危機から救う貴重なゴールを決めると、ヨーロッパリーグ予備選3回戦のヤギェロニア・ビアウィストク(ポーランド)戦のホーム&アウェーでも2試合で3得点。続くベルギーリーグ第3節のワースラント・ベフェレン戦でもゴールを決めて、プロデビューしてから5試合で5得点と鮮烈なデビューを飾った。
開幕から調子が上がらなかった日本代表FW久保裕也(後にニュルンベルクへ期限付き移籍)、ウクライナ代表FWロマン・ヤレムチュクら攻撃の2枚看板に代わり、デイビッドは瞬く間にヘントの若きエースとして定着。ベルギーリーグでは12得点、ヨーロッパリーグ予選では2得点と、ルーキーシーズンでチーム最多となる14ゴールを挙げた。
ゴールドカップでもゴールを量産
2000年1月14日生まれの19歳。アメリカ・ニューヨークのブルックリンで、ハイチ人の両親の下で生まれた。6歳の時にカナダの首都オタワへ移住し、10歳の時にグロスター・ドラゴンズSAに入団し、サッカーを始めた。オタワ・グロスター・ホーネッツ、オタワ・インターナショナルなどで7年間トレーニングを積み、昨年3月にベルギーへ渡ると、名門ヘントのユースチームに加わり、同年8月にはトップチーム昇格し、2022年までの4年契約を結んだ。
ヘントでの鮮烈なデビューにより、昨年8月にはカナダ代表にも初選出された。9月9日のCONCACAFゴールドカップ予選のアメリカ領ヴァージン諸島戦で2得点を挙げ、早くも同国の1トップに定着した。現在開催されているゴールドカップ本大会では、グループリーグのマルティニーク戦で2得点、キューバ戦でハットトリックとここでもゴールを量産。チームは準々決勝で自身のルーツであるハイチ相手に2点差をひっくり返されて逆転負けを喫し、ベスト8で終了するも、7月7日の決勝戦(メキシコ対アメリカ)を残す現時点で、6ゴールで得点ランキング単独1位にいる。
カナダ代表では主に1トップ、ヘントではセンターフォワード、トップ下などで起用されている。非常に冷静なアタッカーで、愛称は「アイスマン」。両足ともに正確なシュートを放ち、俊足を活かしたドリブルも武器としている。ベルギーでのシーズン途中に6試合連続ノーゴールの時期になるなど、好不調の波が激しい点さえ克服すれば、リーグ得点王も十分可能性はあるだろう。
クラブ、代表を含めて、プロデビューから1年で、通算51試合24ゴール10アシストと驚異的なスタッツを残すデイビッド。ドイツの移籍情報サイト『Transfermarkt』によると、推定市場価格は900万ユーロに上昇し、チームではジョージア代表の19歳の新鋭MFギオルギ・チャクベターゼと並び、トップの評価を受けている。ドルトムント、レバークーゼン、ホッフェンハイムなど、ドイツ・ブンデスリーガのクラブが興味を示しているというニュースもある。今後のステップアップに期待がかかる。
Photo: Getty Images
Profile
シェフケンゴ
ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。