コパ・デルレイの新レギュレーション
来季からコパ・デルレイにサプライズが帰ってくることになった。
26日、スペインサッカー連盟は19-20シーズンからの新フォーマットを発表した。それによると、ホーム&アウェイなのは準決勝だけで、それ以外はすべて一発勝負、しかも下部カテゴリーのチームのホームグラウンドで開催されることになった。たとえば、1部のレアル・マドリーと2部Bのコルドバが対戦したとすると、コルドバのホームスタジアムでの一発勝負となる。地元でのサッカー人生で一番大事かもしれない試合に燃える選手がいる一方で、勝って当たり前の空気の中でプレーする控え組――当然サプライズが起きやすくなる。
実はこのフォーマットは2001〜06年に採用済みで、この間の優勝者はサラゴサ(2度)、デポルティーボ、マジョルカ、ベティス、エスパニョールと中堅クラブばかりで、レアル・マドリーがトレド、バルセロナがフェゲラスやノベルダといったいずれも2部Bのチームの手で敗退する、という歴史的なサプライズが起きている(ノベルダ戦のバルセロナのGKが故ロベルト・エンケだった……)。
06-07以降、ホーム&アウェイにフォーマット変更されると順当な結果が多くなり、以降の優勝者はバルセロナが6度、レアル・マドリーとセビージャとバレンシアが2度ずつ、アトレティコ・マドリーが1度と、リーガの焼き直しのような面白味に欠ける大会になっていた。
一発勝負に戻したことでカレンダーが楽になり、参加チーム数を増やすこともできることになった。18-19シーズンに「83」だった参加チーム数が来季は「116」になり、3部リーグ(4部相当)よりも下、地方のアマチュアチームにも門戸が開かれることになった。
1回戦は、カテゴリー上位と下位の対戦が義務付けられているので、レアル・マドリーやバルセロナと地方リーグのチームの対戦というような、アマチュア側にとっては一生忘れられない経験が実現するかもしれない。興行収入という意味でも、開催者のアマチュア側のメリットは大きい。金儲けの話ばかりでうんざりするスペインサッカー界で、こういう夢のある話題は久しぶりである。
前回の一発勝負制は、02-03決勝がマジョルカ対レクレアティーボになるなど「ビジネス的に魅力がない」とか「1部リーグのクラブにメリットがない」などの抗議の声が上がってボツになった経緯がある。財力差という巨大なハンディを手にしておいて、今回はそんなせこいことを言うクラブが現れないことを期待する。
Photo : Getty Images
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。