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なでしこと対戦するオランダのキーマンは「女性版フレンキー」

2019.06.24

女子オランダ代表のキープレーヤー

 オランダ女子代表の武器は間違いなく強力なスリートップだ。センターフォワードのビビアンヌ・ミーデマ(アーセナル)は22歳の若さにしてオランダ代表歴代トップスコアラー(60ゴール)になった。今季の女子プレミアリーグの最優秀選手にも選ばれた。ポストプレーが得意で、懐の深いキープからパスを供給し、味方のプレーを楽にする能力を持つ。

 右ウインガーのシャニス・ファン・デ・サンデン(リヨン)は、爆発的なスピードを誇る。DFラインのビルドアップに詰まったら、ともかく右サイドのスペースにロングボールを蹴っておけば、ファン・デ・サンデンがボールを拾って何とかしてくれそうな雰囲気を持つ。なでしこジャパンの熊谷紗希とチームメートで、今季のCL制覇にも貢献している。

 今回の女子ワールドカップではここまで本来の出来を披露できてないが、リーケ・マルテンス(バルセロナ)は2017年にFIFAが選ぶ年間最優秀選手に輝いたスター選手。左サイドのカットインからのゴール、アシストで、オランダの数多くの勝利に貢献してきた。彼女へのマークがきつくなったことから、ミーデマの負担が減った側面もある。

 そして中盤にも、オランダで絶大な人気を誇るキープレーヤーがいる。ヨハン・クライフに憧れて背番号14を着けているジャッキー・フルーネン(フランクフルト→マンチェスター・ユナイテッド)だ。華麗なパスワーク、決定的なスルーパス、簡単に相手のマークを剥がす動き、献身的な中盤での守備、他の人には見えない状況を把握する戦術能力から、フレンキー・デ・ヨング(アヤックス→バルセロナ)と比較されることが多い。最近も元オランダ代表FWのピエール・ファン・ホーイドンクが「フルーネンは、オランダ女子代表のフレンキー・デ・ヨングだ」と語っている。

 パーソナリティーもフレンキー・デ・ヨングと似ている。この2人はいつも白い歯を見せながら、満面の笑顔でインタビューに答えるのだ。その姿にオランダ人はシンパシーとカリスマ性を感じている。

女子代表MFフルーネンが比較されるフレンキー・デ・ヨング

柔道からサッカー1本に専念した異色キャリア

 フルーネンは年代別柔道のオランダチャンピオンになったこともある柔道家だった。2010年にはU-17欧州選手権で3位になった。こうした格闘技の経験が体のコーディネーション向上と、デュエルでの勝負強さに結びついているのだろう。

 負傷もあって、フルーネンはサッカー1本に絞って競技生活を続けていくことになった。年代別オランダ代表に選ばれたこともあったフルーネンだったが、ベルギーの北部に家族とともに住んでいたせいか、成人してからはオランダサッカー協会のレーダーから消え、A代表に呼ばれることがなかった。本人も割り切って、ブンデスリーガとチャンピオンズリーグでのプレーに集中していたという。そんなフルーネンにベルギーサッカー協会が目を付け、ベルギー国籍を取得するよう勧誘。その話にフルーネンと家族は乗ったが、FIFAのレギュレーションに合わず、流れてしまった。

 結局、フルーネンがオランダのA代表に選ばれたのは2016年1月のこと。まだ21歳という若さだったとは言え、15歳からプロとしてデュイスブルクなどでプレーしていた自負のあるフルーネン本人からしたら「やっと」という思いだった。

 2017年、母国開催のユーロで優勝に貢献し、フルーネンは一躍スターダムに躍り出た。来季は、女子サッカーチームを発足したばかりのマンチェスターUでプレーする。

 6月25日(現地時間)に行われる女子ワールドカップのラウンド16で、日本はオランダと対戦する。中盤で優雅なボールさばきと獰猛なボール狩りを見せ、クレバーに局面を打開していくセントラルMF兼インサイドハーフのフルーネンに注目してみて欲しい。

Photos : Getty Images

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オランダ女子代表フレンキー・デ・ヨング

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中田 徹

メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。

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