20年ぶりW杯で2連勝!
FIFA女子ワールドカップ・フランス大会で、グループステージC組のイタリアは14日、ジャマイカを5-0の大差で下した。初戦でオーストラリアを破りこれで2連勝、実に28年ぶりとなる決勝トーナメント進出を決めた。
「カルチョの国」といわれるイタリアだが、女子サッカーにおいては奮わなかった。W杯の参加も今回が20年ぶりだ。だが今回は、欧州地区予選第6グループをわずか4失点でトップ通過。それでいて、展開するサッカーそのものは攻撃的でもある。「戦術はゼーマンやグアルディオラに学び、選手のマネジメントはアンチェロッティに学んだ」とはミレーナ・ベルトローニ監督の弁。ピッチの幅を広く取りつつ、レジスタのマヌエラ・ジュリアーノを軸に裏のスペースを突くサッカーを展開する。初戦のオーストラリア戦はPKで先行されたが、左ウイングのバルバラ・ボナンセーアの2ゴールで逆転勝利。ジャマイカ戦ではエースストライカーのクリスティアーナ・ジレッリがハットトリックを決め、途中出場のアウローラ・ガッリが美しい2ゴールを決めた。
そんな“アズーレ(アズーリ=「晴天の青」の女性複数形)”は、イタリアの女子リーグ・セリエAフェンミニーレの上位2チームであるユベントスとフィオレンティーナの選手が大多数を占める。国内リーグには盛り上がる兆しも出ている。今季の試合は衛星TV局『スカイ・イタリア』で中継されており、3月24日に行われたユベントス対フィオレンティーナはアリアンツ・スタジアムで行われ、男子チームの公式戦さながら39,000人の観客を集めた。
完全なプロ化には至っていないが
もっとも女子のカルチョは、イタリアではずっとマイナーな存在だった。競技人口も男子に比べれば俄然少なく、1968年から発足したリーグもずっとアマ扱い。ユーベやミランにインテル、ラツィオにローマと名前もカラーも似通ったチームは存在していたが、男子のプロクラブとは別経営で“友好関係” にあったというだけ。本格的に盛り上げようという動きが起こったのはようやく近年のことで、2017年には男子のプロクラブが直接女子クラブを運営することも許可された。それでもまだ、完全なプロ化には至っていない。法整備が終わっていないため選手にプロとしてのサラリーが落とせず、前述のユーベ対フィオレンティーナ戦でもチケットは“0ユーロ”という扱いになっていた。
「女子サッカーに関わるもの全てが情熱を持って取り組んだからこそ、我われは苦境を脱し、20年ぶりにW杯に参戦することができた」
ベルトローニ監督は大会前、そんな言葉を地元メディアに残している。とりあえず、目標に掲げていたグループステージ通過は達成。あとは大会でのパフォーマンスを国内の関心アップとリーグのさらなる活況に繋げられるか。関係者すべての願いだ。
Photos : Getty Images
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。